■南アルプスの光岳小屋のこと
そんな私が初めて役場に連絡した日から、あっという間に半年が過ぎ去った。夏が過ぎて秋も終わりかけた頃、ようやく面談の連絡が届いた。
管理人を募集していた山小屋は、南アルプスの光岳小屋。管理しているのは静岡県榛原郡川根本町で、どこから行っても遠い、大井川の流れるお茶の町だ。
光岳小屋は標高2535mにあり、長野と静岡のちょうど県境に位置する。小屋からは富士山を綺麗に眺めることができて、のんびりするには絶好の場所。南アルプス最南端の山小屋で、そこからさらに南に続く「深南部」と呼ばれるエリアの入り口にある山小屋でもある。
しかし、とにかく遠い。長野県側から駐車できるゲートまでは、最寄りのインターを下りて1時間30分ほど。そこから登山口までは1時間半の林道歩き。さらに登山口から山小屋までのコースタイムは8時間もかかる。
そんな立地的な問題は十分分かって応募したものの、いざ山小屋を始めるとなるとお客さんがきてくれるのか不安が募る。面談はしてもらったものの、結果が出るまでそわそわが止まらない。自分から応募しておいてなんだが、どちらかというとやっていいと決まってしまったらどうしよう、という不安が大きい。
なんせ、よくよく考えずに勢いで応募したものだから、たいそうな計画や見通しがあるわけでもない。始めるためには、当然お金もそれなりにかかる。