■水を確保しないと人工雪は造れない

 人工雪の材料は水である。大量に雪を降らしたり、造ったりするのは大量の水がいる(一機につき1分で数百L)。

 リフトに乗っていて、「うあ、冷たそうだな」「あそこに落ちたらイヤだな」と思って見過ごしているあの人工的な池に溜まっている水こそ、人工雪の源だ。あくまで人工池なのでその水は、主に近くの沢などから引っ張ってくる。井戸水の場合もある。

 それにしても、寒いスキー場でなぜ、あの貯水池の水は凍らないのだろう? もちろん、それは凍らないようにしているからだ。中をポンプで撹拌して凍結を防いでいるのだ。新規で降雪機や造雪機を導入しようとした場合、一苦労なのがこの貯水池と水の確保だ。スキー場は原則、山の上にある。となると、近くの沢は細く、水は決して潤沢ではない。また、沢の水を勝手に引く訳にもいかない。そうした、物理的問題、社会的条件をクリアして、初めて人工雪が現実のものになるのだ。

■こんなにお金がかかっているなんて!

 上記で示した「いくら」はマシンのみの話。造雪機や降雪機を稼働させるには、水や電気の確保の問題もある。そのためスキー場ごと、コースごとにかかるコストは大きく異なる。新たに設置する場合は、そうした部分での巨額な費用を見積もらなければならない。また、メンテナンス代も必要だ。

 ちなみに降雪機で雪を降らすとかかる費用は、7~8円/立方メートル、造雪機だと40円/立方メートル。いかに造雪機のランニングコストが大きいかがわかる。よって、雪が造れない温度・湿度の時は造雪機、雪が造れる条件下では降雪機と使い分けるのが経費的に得策という。

 ちなみに、軽井沢プリンスホテルスキー場の造雪機8基(50トン/7基+100トン/1基=計450トン/8基)を1日稼働させるとランニングコストは40万円ほどという。オープン準備に造雪機8基を使って24日間かかることを単純計算すると880万円となる。軽井沢プリンススキー場では、例年12月の半ばには降雪機に切り替えていくとか。

■人工雪への依存度の高いスキー場

 上記のYetiや軽井沢プリンススキー場に限らず、国内には降雪機、造雪機への依存度が高いスキー場は多くある。基本的には、“気温が冷え込むものの雪はあまり降らない”という気象条件のところだ。

 樫山工業のお膝元である佐久平にある、佐久スキーガーデン「パラダ」は、高速道路に直結という唯一無二の環境。ここも斜面のみ雪があるという場合が多い。

高速道路に直結の「パラダ」は造雪機・降雪機の力が生み出した画期的スキー場

 中央道からアクセスする八ヶ岳方面のスキー場の多くもこの系統だ。また、中京や関西のスキー場も造雪機・降雪機の力で運営しているケースが多い。

 逆に100%天然雪をうたっているスキー場もある。長野県の野沢温泉がその代表格で、白馬コルチナや奥志賀高原も同様だ。一方で、新潟県のかぐらのような、豪雪のあるスキー場でも、営業を安定させるためか、降雪機を設置している場合もある。

■まとめ

 シーズンの早期スタートを支え、安定したスキー場運営をサポート、雪不足問題もフォローしてくれる、すごい縁の下の力持ち、降雪機&造雪機。早いシーズンインにかかる費用やエネルギー、そして関係者の労力は想像を絶するものだ。そのおかげで、毎年待ち焦がれていたシーズンインができるのである。さぁ、残りのシーズンも僅か、滑りに行こう!

軽井沢プリンスホテルスキー場

取材・写真提供/樫山工業株式会社、軽井沢プリンスホテルスキー場、スノーシステムズ株式会社、 スノータウンYeti(五十音順)

文/ミゾロギ・ダイスケ
出典:2017 BRAVOSKI vol.2より再編集