■新居に引っ越し願います
女王バチだけをビニル袋に閉じ込めたところでハチの巣を取り出します。そして、バラの茎につながっていた巣の軸を割りばしにはさんで、ビニタイ(ビニル製結束バンド)で“新居”に固定します。新居とはいっても、余っていた端材を組み合わせて作った雨を少ししのげる程度のあばら家です。
そこまでできたら、新居を自宅から200mほど離れた家庭菜園に運び込み、杭で固定します。事前に周囲で作業をする方など関係者の皆さんに了解を得ておいたので、作業はスムーズに進みました。これくらい離れた場所に引っ越しをしないと、帰巣本能によってハチが元の巣の場所に戻ってしまうことがあるそうなので注意が必要です。
■ウィンウィンの関係で共生へ
今度は、いったん離れ離れになった巣と女王バチを再会させる儀式です。女王バチの入った袋を巣にかぶせますが、なかなか巣を認識してくれません。袋を絞りながら徐々に巣の方に近づけていきます。すると女王バチが自分の巣に気づいて乗ってくれました。ハチが驚いて飛んで行ってしまわないかと、息を飲みながらビニル袋をそっと取り除きます。しかし、女王バチは愛しい巣に戻れて安心したのか、落ち着いた様子でした。
その後、毎日ハチの巣を確認しに行っていますが、女王バチは幼虫に餌を運びしっかり子育てに励んでいました。新たな環境は、アシナガバチが餌とするアオムシ類の宝庫です。ハチが虫を狩ってくれるのは、家庭菜園で野菜を育てる私たちにとってもありがたいことです。
野生動物との共生・共存が大きな課題となってしまっている最近ですが、身近な“危険生物”については、ちょっとした工夫でお互いにとってウィンウィンの関係を築くことができることがわかりました。
筆者のような引っ越し先の環境があることが前提ですが、「ハチの巣ができたら即駆除」というお決まりのパターンで行動する前に、「引っ越し」という新たな手段について考えてみる余裕があってもよいかもしれません。
今回の2つの事例では、危険を感じることなく大変スムーズに行うことができましたが、必ずしも安全に実行できるとは限りません。また、働きバチがいる場合も同じ流れでできるようですが、やはり巣が小さい時期の方が良いでしょう。実施する場合は、ご自身の判断と責任において行ってください。