■大芝山のルートは花園のよう
山頂の絶景を存分に堪能したら、「ブナの別れ」まで戻り、次は大芝山へ。この縦走路はなだらかな稜線が続き、のんびりと歩を進められるのがうれしい。道中にはカタクリやニリンソウの群生が次々と現れ、特に大芝山直前ではかなりの密度で春の花々が咲き、まるで花園のようだった。平坦な場所にある大芝山頂上は、山頂標識があるのみで展望はないが、その分、足元に咲く山野草を愛でられる“花の道”が魅力といえるだろう。
大芝山頂上から「大芝山ノ肩」へと続く稜線は、日本海側と太平洋側を分かつ「中央分水嶺コース」の一部。つまりここに降った雨は、北に流れれば矢沢川から犀川、千曲川、信濃川を経て日本海へ。南に流れれば小野川から諏訪湖、天竜川を経て太平洋へと注いでいくことになる。降った場所のわずかな差で、水の行き先が大きく分かれるという自然の壮大さを感じながら、稜線歩きを楽しめるのがこのルートの醍醐味だろう。
また、今回は立ち寄れなかったが、南麓の善知鳥峠にある「分水嶺公園」の「水のわかれ」というスポットで、流れる水が分岐する様子を見ることができるという。
■歴史のロマンを感じる洞ノ峰
大芝山から少し歩いた先にある「洞ノ峰」は、樹林帯の多い縦走路のなかでも貴重な展望スポットだ。眼下には塩尻の市街地が広がり、その奥へと続く松本盆地の壮大さも実感できる。盆地の先には残雪をいだいた白馬連峰がそびえ、街並みと雄大な北アルプスが織りなすコントラストがすばらしい。
洞ノ峰は広場のように平坦な空間となっているが、ここは戦国時代に築かれた「西條城」の山城跡なのだとか。眼下に広がる展望を目にすれば、戦略的にもここに山城が置かれたことは納得がいく。周囲には土塁や堀切といった遺構らしき人工的な地形も見られ、城跡めぐりが好きな人には興味深いスポットといえるだろう。
霧訪山・大芝山の周遊コースは、アルプスを望む大パノラマや、ミツバツツジ、カタクリ、ニリンソウといった春の花を存分に味わえるのが魅力だ。自然の壮大さを感じる中央分水嶺の稜線歩きや、歴史のロマンにあふれた山城跡など、低山ながら多くの楽しみがギュッと詰まり、心を満たしてくれる贅沢な山旅になった。
<おすすめルート>
山ノ神自然園 → 登山口 → ブナの別れ → 霧訪山 → ブナの別れ → 大芝山 → 洞ノ峰 → 山ノ神自然園
(所要時間:約3時間30分)
●【MAP】山ノ神自然園駐車場
●【MAP】霧訪山