九州の山といえば、阿蘇山や九重山など日本百名山を思い浮かべる人も多いかもしれない。一方で、日本百名山ではないものの、外せない存在として知られているのが高千穂峰(たかちほのみね)だ。

 高千穂峰(1,573m)は、宮崎県と鹿児島県の県境に位置する霧島連山の一座で、円すい形の山容を持つコニーデ型火山。樹林帯から始まり、砂地・岩場・ザレ場と足元が大きく変化するコースは、火山ならではの地形と歩きごたえを感じられる。

 また、「天孫降臨の地」として古事記にも記される場所で、山頂にはその象徴とされる「天逆鉾(あまのさかほこ)」が刺さる。遠くに桜島を望む景色とあわせて、神話と絶景の両方に触れられるのも、この山の特徴だ。ダイナミックな景観の中に、どこか神聖な静けさも感じられる。

 今回は、高千穂河原登山口から出発し、御鉢を経て高千穂峰山頂を目指す往復コース(約3時間半)を実際に歩いた様子をレポートする。

■樹林帯から火山の景色へ変わる登山道

 高千穂河原駐車場に車を停め、高千穂河原登山口へ向かう。登山口からの道は、神社の石畳が続く。樹林帯の中にあり、新緑の時期は心地のよい空間が広がる。

 登山口から15分ほど進むと視界が開け、霧島連山の山々が見えてくる。足元も徐々に細かい砂や小石が増えてきて滑りやすい斜面へと変わり、それまでとは異なる歩き心地になる。

■思うように進めない砂地の登山道

砂地は踏み込むたびに足が沈み、想像以上に体力を使う

 足元は、やがて砂地へと変わる。傾斜はゆるやかだが、踏み込むたびに足が沈み、進んだ分だけ戻されるような感覚があり、歩きにくい。こうした場所では歩幅を小さく刻み、足裏全体で地面をとらえるように意識すると、足を取られにくく安定して進みやすいと感じた。周囲の登山者と声を掛け合いながら、一歩一歩足を前へ出して登る。

■振り返ると広がる景色と歩いてきた登山道

振り返ると、歩いてきた登山道と広がる景色が見えてくる

 砂地を抜けると、足元はごつごつとした火山岩の岩場へと変わる。グリップが効き、砂地に比べて登りやすい区間だ。ストックがあれば手を使わずに登ることもできるが、手を使う場合は、鋭利な岩の先で傷つかないよう手袋を着けておくと安心だ。

 岩場から振り返ると、登ってきた登山道や樹林帯が遠ざかり、視界が大きく広がる。ここで一度立ち止まり、これまでの行程を実感した。北西には、新燃岳や韓国岳など霧島連山の山並みが、同じ目の高さで見渡せる。

岩場からは、新燃岳や韓国岳など霧島連山の山並みが見渡せる

■地層がむき出しになり、火山特有の地形が広がる

御鉢の火口の先に桜島を望むことができる

 岩場を登りきると、御鉢へ向けた登りに入る。足元は軽石が混じる粗い砂地となり、傾斜も増して足を取られやすい。見上げると、御鉢の稜線と空の境界が迫るように感じる。登りきると稜線に出て、視界が一気に開ける。

 御鉢は直径約500mの火口で、地層がむき出しとなったダイナミックな地形が広がる。高千穂峰を代表する見どころのひとつだ。

 訪れた時期は霧島連山を代表する高山植物・ミヤマキリシマが咲き始めており、荒々しい景観の中にピンクがかった淡い紫色の花がやわらかな彩りを添えていた。

 また、この日は御鉢の先に桜島を見ることができた。火山の地形と海の景色を同時に見られるのも、この山の特徴だ。なお、稜線は風の影響を受けやすく、細かい石が当たることや、強風にあおられる場面もある。足元だけでなく、周囲の状況にも注意しながら進みたい。