「棒ノ嶺(ぼうのみね・ぼうのれい)」は、埼玉県飯能市と東京都奥多摩町の境に位置する標高969mの山。尾根が途中で折れるように曲がる地形であることから「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」と呼ばれることもある。
奥武蔵と奥多摩の山域を結ぶ場所にあり、都心からのアクセスの良さと自然豊かな登山道で知られ、人気を集めている。なかでも名栗湖(なぐりこ)側から登る「白谷沢(しらやさわ)ルート」は、この山を代表するコースだ。
清流沿いの登山道には小さな滝や岩場が連続し、沢のせせらぎを聞きながら歩く爽快な登山が楽しめる。標高こそ1,000m未満であるが、累積標高差は約900mと歩きごたえは十分。山頂は広く開けており、晴れた日には奥多摩の山々だけでなく、遠く日光連山や上州の山々を望むこともできる。
新緑が芽吹き、沢沿いの空気が一段と澄みわたる季節。爽やかな水音に包まれながら歩くこの山は、春のハイキングコースとして非常に魅力的である。
■棒ノ嶺周回コースの紹介
●登山口へのアクセス
棒ノ嶺登山の起点として利用されることが多いのが、名栗エリアにある温泉施設「さわらびの湯」である。広い駐車場と登山拠点としての利便性を兼ね備えており、多くの登山者がここから歩き始める。
公共交通を利用する場合は、西武池袋線飯能駅から国際興業バスに乗車し、「さわらびの湯」または「川又名栗湖入口」で下車する。都心からおよそ2時間ほどで到着できる距離にあり、日帰り登山の計画が立てやすい。
駐車場のすぐ近くには有間ダムによって形成された名栗湖が広がり、静かな湖畔の景色が登山前の気分を高めてくれる。登山口までは舗装路をしばらく歩くことになるが、周囲には桜や山林が広がり、春には穏やかな里山の風景を楽しみながら歩くことができる。
登山と温泉をセットで楽しめる環境が整っている点も、この山が多くのハイカーに親しまれている理由のひとつだ。
●標準コースタイム
【さわらびの湯から棒ノ嶺往復コース】所要時間
さらわびの湯(0:00)→ 龍泉寺登山口 (0:05)→ 白谷沢登山口駐車場(0:25) → 権次入峠(2:30) → 棒ノ嶺(3:00)→ バス停(4:50)→ さわらびの湯(5:00)
歩行距離:約8.1km
累積標高差:登り 895m、下り 895m
合計所要時間:5時間
■清流と春の花を楽しむ棒ノ嶺ハイキング
●湖畔から登山スタート! 白谷沢登山口
登山はさわらびの湯の駐車場からスタートする。すぐ近くには名栗湖があり、穏やかな水面を眺めながら歩き始めることができる。最初は舗装された林道歩きで、周囲には山林と集落の風景が広がる。
春は花々や新緑が彩りを添え、登山前のウォーミングアップとしても心地よい。やがて登山道の入口が現れ、ここから白谷沢ルートへと入っていく。沢の流れる音が徐々に大きくなり、山の奥へと足を踏み入れていく感覚が強まる。期待が自然と高まる瞬間だ。
●沢と滝を楽しむ名物ルート! 白谷沢ルート
白谷沢ルートは棒ノ嶺登山のハイライトと言える区間だ。登山道は沢沿いを縫うように続き、大小さまざまな滝や岩場が連続する。足元には清流が流れ、木々の間から差し込む光が水面に反射する光景は非常に美しい。
沢を横断する箇所や岩を越える場面もあり、単調になりがちな登山道とは一味違う楽しさがある。特に岩壁に囲まれた区間では、自然が作り出した地形の迫力を間近に感じることができる。
標高を上げるにつれて沢は徐々に細くなり、やがて水音も遠ざかっていく。沢歩きの爽快感と山歩きの充実感を同時に味わえるこのルートは、関東近郊のハイキングコースの中でも非常に人気の高いコースである。
●尾根へと抜け、岩茸石を経て、棒ノ嶺山頂へ
沢を離れると登山道は尾根へ向かって急登となり、途中に「岩茸石」と呼ばれる大きな岩が現れる。岩茸石を過ぎると登山道は次第に尾根筋へと近づき、周囲の景色も開けてくる。
木々の間から奥多摩の山並みが見え始め、山頂が近いことを感じさせる。尾根道は比較的歩きやすく、沢沿いの区間とは異なる静かな山歩きを楽しむことができる。最後のひと登りを終えると、視界が一気に開け、棒ノ嶺の山頂へと到着する。