今回取り上げるのは、サワラ、シラス、サクラエビの缶詰であります。
なぜ、この3種を取り上げるのかというと、どれも春に“旬”を迎える魚介類だからだ。まっ、この程度のことならみなさんもご存じだと思うので、もうひとネタ披露すると、じつはサワラ、シラス、サクラエビの旬は、春だけじゃないのです。知ってました?
■むしろ、秋冬がおいしいサワラ
サワラは漢字だと魚編に春(鰆)と書くくらい、春が似合う魚である。でも漁業関係者の間では、「むしろ秋冬のほうがおいしい」と言う人が多い。具体的には11月から2月にかけて漁獲されるサワラのことで、身全体に脂が乗っており、その食感はマグロの中トロに匹敵すると言われている。
一方、春のサワラはさっぱりした味わいながら、旨味はあるし、産卵直前の時期なので白子(精巣)や真子(卵巣)が入っていて秋冬とは違う味わいがある。漁獲量は春と秋冬でそれほど変わらないというから、やっぱりサワラは旬が2回ある魚なのであります。
■甘じょっぱい和テイスト
そんなサワラを使った缶詰が「サワラのゆず醤油」。ひと口大にカットした皮付きのサワラを、しょう油、砂糖、万願寺トウガラシ、ユズ果汁で味付けしてある。缶汁は甘じょっぱい和のテイストで、万願寺トウガラシの香りがとても豊か。その味が、サワラの繊細な身肉にしっかり染み込んでいる。
この缶詰は、京都府で飲食店を展開している株式会社ワイズグループの缶詰事業部「CAN BRICK(カンブリック)」が製造している。地元の京都近海で獲れた新鮮な魚介類を使用しているというから、この缶詰のサワラも京都産ということになる。他にもヤガラやタチウオ、ホウボウなどの珍しい魚も缶詰化しているので、いつか全種コンプリートしてみたい。
■春と秋で味が違うシラス
お次はシラスの缶詰だ。商品名は「静岡釜揚しらす缶詰」といい、山梨罐詰株式会社(罐は旧字)が製造している。ちなみに“山梨”罐詰といっても会社は静岡県にある。社長の名字が山梨さんなのだ。
シラスは固有名ではなく、「カタクチイワシ」「マイワシ」「ウルメイワシ」の稚魚の総称である。春先はウルメイワシの稚魚が多く、5月を過ぎるとカタクチイワシとマイワシの稚魚、秋にはカタクチイワシの稚魚が中心になる(産地によって違いあり)。
魚種によって色合いや食感が違うと言われているけど、ぼくの感覚だと、魚種よりも春と秋で味が違う。春シラスはプリプリした食感で味は繊細、とくに生で食べるとわずかな苦みがある。秋シラスは脂が乗って濃厚な味になるので、苦みはほとんど感じない。
■透き通るような白さとふわふわ食感
2018年にこの缶詰が登場したとき、ぼくは衝撃を受けた。原料は釜揚げ(塩茹で)したシラスだけで、他には何も入っていない。味付けすら、茹でたときの塩分だけという潔さなのだ。身は透き通るような白さがあり、舌に乗せればふわふわ食感で、1尾1尾にしっかりした旨味がある。まさに釜揚シラスそのものだった。