毎年5月3日に小谷村で開催される「塩の道祭り」。その体験レポートの後編では、祭りで歩く「千国越えコース」のハイライトとなる「親坂」について触れていきたい。コース前半は、里山や石仏群をめぐり、神社の境内でランチ休憩を楽しむなどハイキング気分を味わえたが、急坂が続く親坂は荷運びをした行商人たちの苦労を実感できるところ。荷物を運んだ牛とともに泊まることができた宿や、釘を使わず建てられた塩の貯蔵庫など、「塩の道」らしさが味わえる。
■難所の親坂を越える
「塩の道」沿いの千国番所跡がある集落を過ぎると、「千国越えコース」の難所といえる「親坂」にさしかかる。急坂が続くため、その手前に送迎バスの乗り場があり、登るのがつらい人は次のポイントの「牛方宿」までバスで楽々と移動も可能だ。
坂の入り口には石仏群があり、馬頭観音が多い。馬頭観音は牛や馬の守り神でもあり、交通安全や厄除守護の仏とされている。また、馬の供養のために建てられるものでもあることから、この坂を越えるのはさぞかし大変だったのだろう。
親坂は「塩の道」の面影を最も感じられる場所だ。荷を運ぶ牛が歩きやすいように石畳が敷かれ、牛をつないだという穴の開いた「牛つなぎ石」、雨に濡れると色味が変わるという「錦岩」、旅人の喉を潤した「弘法の清水」など見どころが多い。清水は、石造りの水盤が2つあり、1つは低い場所に作られていることから、馬や牛用だったと伝えられている。
■塩の道に唯一現存する「牛方宿」
親坂を登りつめると車道に出るが、このあたりは沓掛(くつかけ)という地区。ここには、「牛方宿」という施設がある。牛を使って荷物を運ぶ牛方と、牛が一緒に寝泊りできるのが「牛方宿」。古くは塩の道に数軒あったが、現存するのは唯一ここだけだという。
建物内には、牛方たちが泊まる部屋と、牛を休ませるスペースが残り、牛方は中二階に寝泊まりしながら下にいる牛の様子を確認できたのだとか。県宝に指定されているこの施設も通常は入館料が必要だが、祭りの日は無料開放されている。
「牛方宿」に隣接する「塩蔵」も、塩の道に現存する唯一の建物。半地下構造で上階に塩が保管されていたとされる。塩の保管庫であるため金属は腐食してしまうことから、釘が使われていないことが特徴だ。