長野県には、日本海の糸魚川から県中央部の松本市を結ぶ、約120kmにわたる「千国(ちくに)街道」と呼ばれるルートがある。古くは、日本海から塩をはじめとする海産物が信州に運ばれたことから「塩の道」と呼ばれてきた。
この歴史ある道を舞台に、毎年5月初旬には、小谷村・白馬村で「塩の道祭り」、大町市で「塩の道湖畔ウォーク」が開催される。なかでも小谷村の「塩の道祭り」は、毎年2,000人以上が参加する人気イベントとして知られている。
小谷村は5月3日、白馬村は5月4日、大町市は5月5日と日替わりで舞台が変わり、それぞれ異なる魅力を楽しめるが、個人的には小谷村で歩く「千国越えコース」が、“山を越えていく旅人”の感覚をより色濃く追体験できると感じている。その小谷村の「塩の道祭り」に、気づけば4年連続で参加しており、改めてそのルートをまとめていきたいと思う。
■小谷村の下里瀬からスタート
小谷村を通る「塩の道」にはさまざまな峠を越えるコースがある。5月3日の「塩の道祭り」で歩くのは、「石坂越えコース」の途中からスタートし、「千国越えコース」を登って栂池高原まで向かうルートだ。道のりは約9㎞で、所要時間は4時間20分である。
スタート地点は下里瀬(くだりせ)という地区で、祭りの当日は栂池高原の駐車場とJR大糸線・南小谷駅から無料のシャトルバスが出ている。バスの運行は大体7時ぐらいから。ワンコ連れで「塩の道」歩きを楽しむ参加者も多く、このバスにはペット同伴可能な便も用意されている。
「塩の道祭り」の参加は無料で、当日、下里瀬にある受付に行くとルートマップと、参加記念品のオリジナルてぬぐいがもらえる。自分のペースで自由に歩いていいので、出発時間は特に決まっていないが、受付の下里瀬基幹センターの舞台で「お代官さま」に扮した村長が9時頃に出発の挨拶をする。これを目安にスタート地点に向かえば、途中の休憩時間も含めて、大体14時過ぎにはゴールの栂池高原にたどり着ける。
■おたり流 笹だんご発祥の地「虫尾」
坂を登りきった先にある虫尾という地区には「阿弥陀堂」が建っている。「塩の道祭り」では各所に休憩ポイントとして「ふるまいテント」が設置されており、このお堂の前では飲み物がもらえる。お堂には「おたり流 笹だんご発祥の地」という看板が掲げられており、オヤマボクチを練りこんだというもちもちの笹だんごが売られている。
現在、小谷村には姫川に沿ってJR大糸線や国道148号が通っているが、「塩の道」はそうした交通ルートよりも高くなった山肌を並行するように進んでいくイメージだ。昔は、川のそばを通らず、こうして山の中をトラバースしていったのだなと実感できる。その当時、物資を運んでいたのは、牛や馬、荷物を背負って運ぶ歩荷(ぼっか)と呼ばれる人たち。厳しい道のりに行き倒れた旅人もいたとされ、その霊を慰める石仏も道のかたわらに置かれている。
■街の中心地「小谷村郷土館」
山道が下りになると国道148号沿いの「小谷村郷土館」の横に出る。「塩の道祭り」の日は無料で見学することができ、小谷村で発見された恐竜の足跡の化石などが展示されている。民俗・歴史資料も充実されており、村の文化を知ることもできる。
茅葺のこの建物は、かつて村役場として使用されていたそうで、現在の役場はこの建物の裏に位置している。その役場の前が休憩所になっており、飲み物やおたり漬けなどのふるまいをいただける。