■先行者の助言が導いた一尾 食い渋りを攻略して手にした尺マブナ

マブナとのやり取りのシーン。薄茶色の水の中で銀白の魚体がひるがえる瞬間がたまらない

 釣りを開始した直後は期待とは裏腹に反応が乏しく、1時間以上探り歩いてもジャミ(クチボソやタモロコなどの小魚)らしきアタリが一度きり。このホソにはマブナが入っていないのではないかと考え、別のホソへの移動も頭をよぎった。

 しかし、少し離れた場所で釣りをしていた先行者は時おり竿を曲げている。先週もここを訪れたというその地元の方に話を聞くと、数日前の降雪の影響で水温が低下し、マブナの活性も落ちて食い渋っているようだという。

 「エサの放置時間を長めに取った方がいいかもしれない」とのアドバイスを受け、放置時間を20秒から30秒ほどへと変更。さらにハリ数も1本から2本へと増やし、アピール力を高める作戦に切り替えた。

マブナがエサを見つけやすくなるようにハリは2本とし、アカムシは10匹前後を房掛けにした

 すると30分ほど経った頃、水中のウキがゆっくりと数cm引き込まれた。いったん止まり、再びわずかに動いたタイミングで肘を曲げて軽くアワセを入れると、手元にズシリとした重量感が伝わる。

 「おっ、この引きはきっと本命に違いない!」

 薄茶色に濁った水の中で銀白色の魚体が見えた瞬間、それが本命のマブナであることを確信した。無事にタモ網に収まったマブナを計測すると、全長31cmの尺越え。心の底から本当に嬉しいと思える一匹だった。

 その後も同様に探り歩き、実釣およそ3時間で合計4匹(14~31cm)のマブナを手にすることができた。先行者のアドバイスを参考にするなど、釣り人同士の交流の大切さを改めて実感した釣行となった。

 ※産卵期の魚を相手にする釣りであるため、魚への負担をできるだけ減らすよう、針のカエシを潰すなどの工夫を心がけている。

この日、最初に釣れたマブナは念願の尺越え(全長31cm)
春ならではといえる、素晴らしいコンディションの美形マブナ
実釣3時間でのマブナの釣果は4匹(14~31cm)。このあと、魚たちは元気なうちに元いた水路へと帰した

■水面で繰り広げられる命の営み マブナの「ハタキ」と捕食者の影

霞ヶ浦周辺の水路では、主に3~4月にかけてマブナの産卵行動「ハタキ」が見られる

 時刻は昼近く。照り付ける陽射しに、わずかな暑さを感じ始めた頃だった。10mほど離れた先から、突如「バシャバシャ!」と水面が弾ける音が響いてくる。すぐに、それがマブナの「ハタキ」だと気づいた。帰り支度にはまだ少し早い。そう思いながらも、その音に引き寄せられるように、釣りを切り上げてハタキの様子を観察することにした。

 ホソの際から2mほど下がり身をかがめ、できるだけ気配を消して水面を見つめる。しばらくすると、水草が揺れ魚の気配を感じる。直後に水面が「バシャバシャ」っと弾けた。銀白の魚体がひるがえり、2匹のマブナが同時に水草に体を擦りつけるようにして卵を産み付けている。その光景はどこか穏やかで、春の訪れを実感させるものだった。

この日のハタキは単発的だったが、産卵期のピークを迎えると、このような光景が頻繁に見られるようになる

 しばし見入っていると、その周囲にゆっくりと近づく別の大きな魚影があることに気がつく。大きな口を開けて水草の間をついばむその正体はコイだった。マブナが産み付けたばかりの卵を食べているようである。命をつなぐ営みのすぐそばに、それを糧とする別の命がある。厳しくも当たり前の自然の姿が、目の前で静かに繰り広げられていた。

マブナの産卵期には、卵を求めて水路内にコイもやってくる(昨年4月にマブナ狙いで釣れた56cmのコイ)

 こうした光景はこれまでにも何度となく目にしてきたが、そのたびに、水辺にはまだ多くの学びと発見が残されていることを実感する。春の霞ヶ浦は、釣りの楽しさだけでなく、生命のドラマに出会える場所でもある。あなたもこの春、霞ヶ浦の水辺に足を運び、マブナ釣りならではの奥深い魅力を味わってみてはいかがだろうか。

【注意事項】
 これからの季節、霞ヶ浦周辺の田んぼでは農作業が盛んになってくる。軽トラックや小型重機の出入りが頻繁になるので、釣り場近くに車を停める際には農作業の邪魔にならないようくれぐれも注意しよう。もちろん釣り場でのゴミのポイ捨てなども厳禁である。
 霞ヶ浦・北浦では湖の堤防外にあるホソでの釣りは遊漁券が不要。ただし、桜川、小野川など漁業権が設定されている一部の流入河川で釣りする際は遊漁券が必要になる。

●【MAP】霞ヶ浦