春の霞ヶ浦では、いままさに水の中で大きな変化が始まっている。やわらかな陽射しに包まれた湖岸ではつくしが顔を出し、小さく可憐な花々が足元を彩るなど、春の到来を感じさせる光景が広がる。そんな水辺で始まるのが、マブナの「乗っ込み」だ。
冬のあいだ、深場で過ごしていたマブナたちは産卵を控えて浅場へと移動し、小さな水路(ホソ)に群れで入り込む。この時期は食欲も旺盛で、年間でも特に釣りやすい絶好のタイミング。
さらに尺サイズの大型も狙えることから、春の一大イベントとして多くの釣り人を魅了している。今回は、霞ヶ浦のホソを舞台に、この季節ならではの胸が高鳴る釣りの魅力を紹介する。
■春の霞ヶ浦で始まる「マブナの乗っ込み」とは
霞ヶ浦におけるマブナ(ギンブナ・キンブナの俗称)の「乗っ込み」とは、普段は広大な湖の中で暮らしているマブナたちが、産卵のために湖岸沿いの浅場へと移動し、農業用小水路(通称「ホソ」)へと入り込んでくる現象を指す。かつて霞ヶ浦の湖岸にはヨシ(別名アシ・イネ科の抽水性植物)原が広がり、マブナたちはそうした植物の根元に卵を産み付けていた。
しかし、護岸整備が進んだ現在ではその多くが失われ、代わってホソに残るヨシなどの植物が貴重な産卵場となっている。
マブナは「ハタキ」と呼ばれる産卵行動の際、植物に体を擦りつけるようにして卵を産み付けるが、この行動が始まるとエサをあまり口にしなくなるといわれる。
一方で、その直前の乗っ込み段階では産卵に備えて盛んにエサを追うため、釣りの好機となる。特にこの時期は、普段はなかなか出会えない尺(30.3cm)クラスの大型が姿を見せることもあり、春の霞ヶ浦を代表する一大イベントとなっている。
■春のマブナはどこにいる? 鍵を握るホソ選び
乗っ込み期のマブナを狙ううえで重要となるのが、どのホソに入るかというポイント選びである。霞ヶ浦周辺には、イネを栽培する「イネ田」とレンコンを育てる「ハス田」という2種類の田んぼが広がっており、それぞれに接するホソの環境も大きく異なっている。
今回釣行したのは3月中旬。この時期はイネ田への通水がまだ始まっておらず、水量が少ないうえに水の動きも乏しいホソが多い。
一方、ハス田は年間を通じて水を張った状態で管理されていることが多く、水量が安定しており、水の入れ換えもあることから水質も良好に保たれやすい。こうした条件を踏まえると、乗っ込みで浅場へ差してくるマブナにとっては、ハス田周辺のホソの方が可能性が高い。そこで今回は、ハス田に隣接するホソを中心に釣りを展開することにした。
なお、4月以降にイネ田への通水が始まれば状況は一変し、イネ田周辺のホソにも好条件が整っていく。季節によって有望なエリアが変化する点も、霞ヶ浦のマブナ釣りの面白さのひとつといえるだろう。
■乗っ込みマブナを探り釣りで狙う シモリウキ仕掛けの基本
今回の釣りで用いたのは、春のマブナ釣りでは定番の「シモリウキ仕掛け」。複数の小さな玉ウキを連ねたこの仕掛けは、エサが常に川底に着いた状態を保ちやすく、川底でエサを探すマブナの習性に適している。
特に春の乗っ込み期は、ホソのどこにマブナが潜んでいるかが分かりにくいため、水路沿いを歩きながら広く探る「探り釣り」が有効となる。ホソの水深は場所によって変化が大きく、その都度ウキ下(ウキからハリまでの長さ)を調整するのは手間がかかるが、シモリウキ仕掛けであればその必要がなく、テンポよく探り歩くことができる。
この日はエサにアカムシ(ユスリカの幼虫)を用い、ハリに10匹ほどを房掛けして使用。幅2m前後のホソの両岸際(ヘチ)を中心に仕掛けを投入し、20秒ほど待って反応がなければ数10cmポイントをずらしながら、手返しよく探っていった。
筆者が使用したタックルと道具は以下のとおりである。
【筆者の使用タックル】
竿:硬めのヘラブナ竿 2.7m
ミチイト:ナイロンライン 1.2号
シモリウキ: 0号のシモリ玉を5個使用
オモリ:重さの調整が可能な板オモリ(ラインを傷つけないために板オモリ軸を使用)
丸カン:ハリス止めとして使用
ハリ:袖針5号(0.8号のハリス付きで、カエシはつぶした)
エサ:生きたアカムシ(ユスリカの幼虫)
【あると便利な道具】
タモ網:長い柄のついた魚を掬うための網
針外し:魚がハリを飲みこんでしまった際に使用
エサ入れ:エサの乾燥を防ぐ
水汲みバケツ:釣った魚を生きたまま一時的に入れておくもの
エアーポンプ:水汲みバケツに入れた魚に酸素を供給するポンプ
トレー:魚の写真撮影をする際に水を張って使用
観察水槽:釣った魚を横から観察できる
手洗い用の水:ペットボトルに入れて用意
タオル:濡れた手を拭くために使用