人力だけで日本百名山、二百名山、三百名山すべてを自らの足で踏破したアドベンチャーレーサー・田中陽希(たなかようき)さんが、新たに「台湾百岳(たいわんひゃくがく)ひと筆書き Great Traverse(仮)」へのチャレンジを発表した。
舞台となる台湾の山々や挑戦の詳細について、田中さん自身に話を伺ってみよう。
◼️九州ほどの面積の中に標高3,000m以上の山が200座以上
2014年に田中さんが挑戦した「グレートトラバース 日本百名山ひと筆書き」とは、日本列島に点在する日本百名山を南から北へと人力で結ぼうという前人未到の企画。陸地は徒歩で、海峡区間はカヤックを使い、全行程7,800kmを208日11時間かけて踏破した。
今回の挑戦はその台湾版。55年前に選定された「台湾百岳」すべてを結び、1本の線として人力で踏破しようというものだ。
挑戦の舞台となる台湾は、日本の登山者には馴染みが薄いが、九州ほどの面積の中に標高3,000m以上の山が268座(日本は23座)もひしめいている山岳大国だ。
「なかでも、台湾百岳は南北に連なる中央山脈周辺に分布していることが特徴です。日本の百名山のように、遠く離れたところにポツンと山があることはなく、比較的まとまっています。選定の基準に “台湾を代表する名山を長く繋げて登ってほしい”という想いがあるので、縦走することを前提に選ばれており、単独で登る山はほとんどありません」
多い時は、一度の入山で台湾百岳を10座前後登頂することを目指すそう。そのため、縦走中は常に3,000m~3,500mの標高を歩き続けるハードな挑戦になる。また、縦走途中でのエスケープルートは乏しく、一度縦走が始まったら、その山脈を最後まで歩き切って下山するか、もしくは引き返すしか選択肢がない。
「登山道は日本の破線レベルが実線だったり、本線登山道でも藪漕ぎがあったりします。山の質は極めて脆く、落石に注意しなければならないエリアも多い。また、地図上の登山道以外の立ち入りは固く禁止されており、ルールを破った場合は二度と入園許可が下りないこともあるそうです」
◼️日数の長さと補給の難しさ、天候の良し悪しが計画達成へのポイント
もうひとつ、台湾と日本の山の大きな違いは、山小屋事情にある。
避難小屋レベルでも数は極めて少なく、有人の営業小屋に至っては全土に4、5軒しか存在しないとのこと。日本のように山小屋を利用して温かい食事や寝床を提供してもらったり、行動食や飲み物を買い足すことはできない。
「そのため、今回の縦走中はほとんどがテント泊となります。毎回スタート時は10日から2週間分ほどの食料を背負うことが予想されます。バックパックは最低でも30kg以上になりそうです」
田中さんは今回の計画達成のポイントのひとつに天候を上げている。そこで、天候が安定しやすい10月頭から3〜4か月ほどをチャレンジ期間として想定しているのだが、雨が少ない時期はどうしても縦走中の水の確保が難しくなる。高山での長期縦走になるので、高山病予防のためにも水分補給はどうしても欠かせない。水の確保は、今回の計画の大きなネックになりそうだ。
「当初は3~5月を予定していましたが、台湾山岳協会へ相談したところ、即答で「3~5月はダメ、10月~1月がいい」と教えていただきました。理由は天候です。台風の時期は、国立公園への入山が数日禁止になることもあるそうです」