登山の必須の持ち物の一つにファーストエイドキットがある。アウトドアで怪我をしたり、具合が悪くなったりした時、すぐに医者に診てもらえるわけではない。その場で最初にとる処置が「ファーストエイド」である。そのための道具を詰め合わせたものが「ファーストエイドキット」だ。ファーストエイドキットの中身は、行程や山行のスタイルなどによって、人や立場によって異なるとは思う。40年間山に登ってきて、実際に大きなけがをした経験はないが、ファーストエイドキットはとても大切だと考え、何を持っていくべきかいろいろ試してきた。

■ケースは大切

100均で見つけたお気に入りのケース(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)
開くと何がどこにあるかわかりやすい(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

 初期のころは巾着袋に入れていたのだが、必要なものを探すのに時間がかかる。そこで小ぶりなポーチに変更した。しかし、中身が増えてくるとポーチでも必要なものを探すのに時間がかかる。現在使用しているのは、ダイソーで見つけた観音開きになるポーチだ。開くと何がどこに入っているかわかりやすく、必要なものだけ取り出せるので気に入っている。

 もちろん市販のファーストエイドキットや専用のポーチを購入するのもよいと思う。筆者の場合、登山用具店で売られているのを目にしたとき、すでに自分なりのキットを持っていたので、市販のものを使ったことはない。これからそろえるのであれば、市販のものを購入するのでもよいと思うが、中身を取り出しやすいかどうかは重要なポイントだ。筆者のポーチは防水ではないが、防水性能があるポーチならばなおよい。

■自分にとっての大切なアイテムや常備薬を加えてカスタマイズ

 市販のファーストエイドキットは中身がそろっていて便利であるが、それさえ持てば万全というわけではない。自分にとって必要なものを追加しよう。筆者の場合は、靴ずれの時に絶対的な信頼を置いている「ソルボバン」は欠かせない。

常備薬は容量の小さいものを購入したり、小さく小分けしたりして、コンパクトに持ち運ぼう
(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

 さらに、法律上の問題で、市販のファーストエイドキットには「薬」は入っていないので、

・けがをしたときの消毒薬
・毒虫に刺されたときの薬
・捻挫したときの薬
・足がつったときの薬
・痛み止め薬

などは、自分に合ったものを入れるようにしている。

 虫刺され薬としてステロイド系の軟膏を、痛み止め薬としてロキソニンをすすめている記事をよく見るが、筆者の場合はそこにはこだわらず、自分が「使い慣れた」薬を入れるようにしている。

 また、筆者のように月1回程度しか山に行かないという場合は、いつのまにか薬の有効期限が切れてしまうこともある。期限切れを防ぐために、家庭で使用している薬と同じものを山用にも購入し、家庭用の薬を家で使い切ったら、山用の薬を家庭用に回し、新しく購入したものを山に持って行っている。

 薬に対するアレルギーを持っている人もいるので、本人持参の薬を使うのが基本。

■山でファーストエイドキットを使う場面を想像してそろえよう

細かい汚れを落とすには穴あきペットボトルキャップは優秀。土の汚れが付いたまま絆創膏を貼ると、悪化する場合もある(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

 山で、ファーストエイドキットを使うのはどんな時だろうか。擦り傷、切り傷、刺し傷、靴擦れ、マメ、蜂やアブなどの虫刺され、捻挫、骨折などが考えられる。岩などで激しくこすれた場合、傷の範囲は広いかもしれない。止血しなければいけないほどの出血の可能性もある。

 使用する場面をイメージして、必要なものをそろえるといいと思う。

 例えば、擦り傷の場合を考えてみる。傷口の洗浄用に、筆者は穴を開けたペットボトルキャップをキットの中に入れている。バックパックの中の水のボトルのキャップをこれにつけ替えると、少量の水でも適度な水圧で水を噴出して洗浄することができるのだ。その他、絆創膏やガーゼ、包帯など必要なものが想定されるはずだ。