■ 地元らしさに触れられる季節行事や市場

 旧市街と街を取り巻く自然環境をゆったりと満喫できるのがオフシーズンの醍醐味ということはすでに述べたが、この時期はまた、観光客よりも地元の人々の暮らしが前面に出る時期でもある。メラーノ旧市街の各所で、週に数回、農産物市場や、地元のワインやチーズを扱うフェアなどさまざまなイベントが開かれている。観光向けというより、地元で暮らす人々のために開かれるこれらの市場やイベントに参加してみると、地域文化を肌で感じられる貴重な機会になる。

 メラーノに滞在中、ほぼ1日おきに地元の特産品の市場、雑貨などのフリーマーケットなどが開かれていたが、だいたい早朝から午前中で終わってしまうので、市場巡りをするには計画的に行動する必要がある。毎週のイベント情報は旧市街のインフォメーションセンターで確認できるので初日に立ち寄って情報収集すると、ちょうど明日、年に一度の「フワラーフェスティバル」が開催されることがわかった。

旧市街の中心、クアハウスの向かいにあるインフォメーションポイント

パッシリオ川沿いの遊歩道一帯が会場。ホットドッグなどのストリートフード店もあり、スタン ドを冷やかしつつ食べ歩きも楽しめる

 翌朝10時のスタートに合わせ、フラワーフェスティバル会場へと足を運んだ。生憎の曇り空にもかかわらず、川沿いの遊歩道はびっしりと人で埋まっていた。両脇に出店しているスタンドには、見たこともないようなアルプスの高山植物から極彩色の南国の花々、多肉植物やサボテン、日本の紅葉など、ありとあらゆる植物が並んでいる。これはもう、庭仕事が好きな人にとってはパラダイスのような眺めだ。

 実際、店先で話し込んでいる人々は自宅の庭を整備したり、何か新しい植物を植えたいというプランを持って来ている人がほとんど。専門家にあらゆる質問を投げかけては、どの植物が最も自分の庭に適しているか、あるいはどう手入れをすればもっと良く成長するかなど、熱心に聞き入っていた。

 メラーノのみならず、イタリアのアルプスの村へ行くたびに美しく手入れされた通りの花々に感動するのだが、この通りに集まっているガーデニング愛好家の様子を見て、ようやく合点が入った。フラワーフェスティヴァルを眺め歩きながら、花や植物を愛し、自然の美に包まれる暮らしを大切にする地元の人々の生活を垣間見たような気持ちになった。

文・写真/田島麻美