新生活の疲れや忙しさの中で無意識にたまってきたストレスを感じている人もいるだろう。そんなときは、自然の中でそっと心をリフレッシュしてみてはいかがだろうか。

 登山はハードルが高いと思われがちだが、マイカーやリフト、ゴンドラを利用して、標高の高いところでしか見られない高山植物に出会えるスポットがいくつかある。

 6月には山々が本格的な“花の季節”を迎える。今回は、関東からアクセスしやすく、登頂しなくても花々と出会える場所を3か所紹介したい。

■尾瀬ヶ原の湿原を眺めながら木道を歩こう

ミズバショウと至仏山を眺めながら歩く木道

 「尾瀬」と聞いて登山を思い浮かべる人も多いが、尾瀬戸倉駐車場から鳩待峠(はとまちとうげ)まではバスが1時間ごとに定期運行している。登山道は傾斜の緩い木道が整備された湿原歩きが中心で、歩きやすいのが特徴だ。「至仏山(しぶつさん・標高2,228m)」は尾瀬を代表する山だが、登頂せずとも尾瀬ヶ原までの自然散策だけでも十分訪れる価値がある。

 6月にかけては、尾瀬ヶ原ではミズバショウの群生が見頃を迎える。白く可憐な花が一面に咲き誇る風景は、どんな疲れも吹き飛ばしてくれるだろう。尾瀬への玄関口である鳩待峠からのルートでは、目の前にそびえる至仏山を背景に、残雪と新緑、咲き始めた高山植物が織りなすコントラストを楽しめる。

 人気の山のため、休日は混み合っていることがある。駐車場には早めに到着することをおすすめする。

 なお、鳩待峠の登山道は開通しているが、今年は残雪が多く足元には注意が必要だ。訪れる際は最新情報を確認してほしい。

<車でのアクセス>
関越自動車道を利用の場合:沼田ICから尾瀬戸倉駐車場まで約50分

<公共交通機関でのアクセス>
JR上越新幹線 上毛高原駅利用の場合:関越交通バス利用し、尾瀬戸倉バス停まで約1時間45分
JR上越線 沼田駅利用の場合:関越交通バス利用し、尾瀬戸倉バス停まで約1時間20分

<季節限定「尾瀬号」でのアクセス>
2025年5月23日(金)~ 10月19日(日)で運行している新宿(練馬・川越)から尾瀬戸倉駐車場までの直行便を利用

※尾瀬の自然保護と交通渋滞緩和のため、尾瀬戸倉駐車場から鳩待峠まではマイカー規制あり。バスかタクシーを利用

鳩待峠から牛首分岐(尾瀬ヶ原の中央)までのトレッキングコース】所要時間
鳩待峠(0:00)→ 山ノ鼻(1:00)→ 牛首分岐(1:40)→ 山ノ鼻(2:20)→ 鳩待峠(3:20)
歩行距離:約9km
累積標高差:登り 250m、下り 250m
合計所要時間:約3時間30分

●【MAP】尾瀬ヶ原(群馬・福島・新潟県)

■車山(霧ヶ峰)で天空の花散歩を楽しもう

真っ赤なレンゲツツジが咲き誇る(画像提供:車山高原 スカイパークリゾート)

 長野県にある標高1,925mの「車山(くるまやま)」は、霧ヶ峰の主峰にして日本百名山のひとつだが、「車山高原スキー場」から2本のリフトを使えば、体力に自信のない人でも標高1,900m地点まで一気にアクセスできる。電車を利用する場合は、JR茅野駅から車山高原スキー場までバスが通っている。しかし、車山高原スキー場行きは土日1日3本のみの運行なので、時間を調べてから行こう。

 車山湿原は、国の天然記念物に指定されており、標高1,770mに傾斜面が広がるため、他の湿原にはない植物を楽しめる。車山外周コースは所要時間が約1時間半と短く、アップダウンが少ない。

 また、登山道は木道で整備され、傾斜がある場所には石畳が敷かれているので、初心者でも歩きやすい。「登山」というより「天空の花散歩」という言葉がしっくりくる場所で、6月にはオレンジ色のレンゲツツジが斜面を覆い尽くし圧巻の景色となる。

<車でのアクセス>
中央自動車道を利用の場合:諏訪南ICから車山高原スキー場駐車場まで約40分
関越自動車道と上信越自動車道を利用の場合:佐久南ICから車山高原スキー場駐車場まで約60分

<公共交通機関でのアクセス>
JR茅野駅から車山高原スキー場まで約60分(アルピコ交通バス)

【車山外周コース】所要時間
車山スカイプラザ(0:00)→ スカイライナーリフト乗車(0:10)→ スカイパノラマリフト乗車(0:20)→ 車山山頂(0:30)→ 車山乗越(0:50)→ 車山湿原(1:10)→ 車山肩(1:30)→車山山頂(2:00)→ スカイパノラマリフト乗車(2:10)→ スカイライナーリフト乗車(2:20)→車山スカイプラザ(2:25)
歩行距離:約3.6km
累積標高差:登り 約172m、下り 約172m
合計所要時間:約2時間〜2時間半(リフト乗車時間含む)

●【MAP】車山(霧ヶ峰・長野県)

■お花畑の入笠山にトレッキング

「幸福が訪れる」の花言葉をもつスズラン(画像提供:富士見パノラマリゾート)

 「入笠山(にゅうかさやま)」は、同じく長野県にある「花の宝庫」ともいわれる標高1,955mの山だ。中央自動車道・諏訪南ICから車で7分のところにある「富士見パノラマリゾート」のゴンドラを使って高原地帯まで一気にアクセスが可能だ。

 標高1,780mのゴンドラ山頂駅から徒歩1分の公園では、120万本ものすずらんが咲き誇り、5月24日(土)〜 6月22日(日)まではすずらん祭りも開かれる。他にも、入笠湿原を中心にニリンソウやシロバナノヘビイチゴなど、さまざまな高山植物が目を楽しませてくれる。

 山頂駅から60分ほどで登ることができる入笠山山頂は絶景スポット。登山道は整備されており、木道やベンチも多く、自分のペースで歩ける。 たくさんのお花畑に癒される場所だ。

<車でのアクセス>
中央自動車道を利用の場合:諏訪南ICから富士見パノラマリゾートまで約7分

<公共交通機関でのアクセス>
JR中央東線富士見駅から無料シャトルバスで10分もしくはタクシー
※シャトルバスは1日1便のみ、4/25~11/24の毎日運行
往路/富士見駅10:00発  帰路/富士見パノラマ発15:00発

【入笠山山頂コース】所要時間
ゴンドラ山頂駅(0:00)→ 入笠湿原(0:15)→ 入笠山山頂(1:00)→ 入笠湿原(1:45)→ ゴンドラ山頂駅(2:00)
歩行距離:約5km
累積標高差:登り 280m、下り 280m
合計所要時間:2時間(湿原までの往復のみなら約1時間)

富士見パノラマリゾート入笠山トレッキング
(動画提供:富士見パノラマリゾート)

●【MAP】入笠山(長野県・富士見町)

■事前の準備でより楽しい登山に

雨の日はレインウェアとザックカバーで快適なトレッキングを

 春から初夏にかけては特に天候が変わりやすい季節でもある。山の天気は平地と異なり、突然の雨や霧に見舞われることもあるため、出かける際には、レインウェアやザックカバー、折りたたみ傘などを準備しておくとよい。雨に濡れた高山植物は、晴れの日とはまた違った表情を見せてくれる。

 訪れる場所や季節、標高によっても咲いている高山植物が違うのもトレッキングの楽しみだ。事前に現地の観光案内や索道事業者のHPで、季節の高山植物について調べてから登るとより楽しめるだろう。初夏の自然の景色で心と体をリセットする旅に出かけてみてはいかがだろうか。

 

※この記事の情報は2025年5月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。