■失恋したMさんに捧げる山行プラン

失恋で傷ついた心の癒しとなる、御在所山頂からの眺め

 部下に誘われ、得意先の男性のお客様Mさんと3人で岐阜の居酒屋で飲んでいた時のこと。Mさんの「パートナーが家を出て行った」という突然の告白で、場の空気は一変した。

 当時体力の衰えを感じていた筆者は、以前のように初心者の方を山登りへ誘うことはしていなかったが、このときばかりは「もしよろしければ、山に行ってみませんか」と思わず声をかけてしまった。

 「山ガールに会えるかな」とMさんも楽しみな様子で、突然の山登りのお誘いは無事承認された。

 ここからは言い出しっぺの筆者が、Mさんのためにがんばる番だ。山に行って何をしたいかと聞いてみたところ、

1. 気分転換したい
2. 山ガールに会いたい
3. 少し運動したい、登山道を歩いてみたい
4. 山登りの気分を味わいたい

 といった返答があった。その後数日かけ、筆者は普段運動をしないMさんに、山の気分を味わってもらうためのプランを練った。

 行き先に選んだ山は、三重県の二百名山「御在所山(ございしょやま)」。行きはロープウェイで山上公園駅まで行き、そこから山頂までのほぼ平坦な道をハイキング。再び駅に戻ったら隣接する展望レストランで食事をし、裏道登山道を下り下山。最後に温泉で汗を流し、帰宅するプランに決めた。

 メンバーは部下とMさんと筆者の3人。部下とはひと月前に筆者と八ヶ岳の編笠山に登ったばかりで、毎日ジョギングをする心強いアスリートだ。

 Mさんには事前にどんな靴や服があるかを確認。持っているレインウェアを持参していただくとともに、溝のある運動靴、動きやすい服をお願いした。

■登山と言いつつ、登りはロープウェイを利用

 晴天に恵まれた登山当日。Mさんの行き帰りの運転疲れや、足や体の負担を最小限にすることを考え、車で迎えに行った。すでに自宅の外で待っていたMさんを車に乗せ、御在所山へ向かう。

 さすが営業マンのMさん。楽しいトークで行きの車内を爆笑に導いてくれた。

御在所ロープウェイに乗り込む

 御在所山に登るといっても、今回の登りはロープウェイ。もはや山登りではないと思われても仕方ないが、今回は登山初心者のMさんの気分転換が目的の登山。ベストな判断であった。