●藤野やまなみ温泉から峰山ピストンコース

登頂した3月中旬。峰山山頂では山桜がきれいに咲いていた

 峰山は、他の山と組み合わせるのが少し難しく、1座のみの専用コースとなる。アクセスは「やまなみ温泉入口」バス停を利用しよう。バス停の近くに峰山登山口の標識がある。

 峰山は古来から燃料の宝庫として地域の生活と強く結びついており、山頂には火防の神様が祀られていることが、選定の理由となったそうだ。

 山に足を踏み入れると、高い木々に覆われた樹林帯が続く。道中は景色がないが、標高570mの山頂は、道志の山々の向こうに白く冠雪した富士山も見える。ベンチとテーブルも設置されているので、休憩もとりやすい。下山後は、2023年8月にリニューアルしたばかり、100%源泉かけ流しの藤野やまなみ温泉で汗を流していくのがおすすめだ。

藤野やまなみ温泉から峰山ピストンコース【所要時間】
藤野やまなみ温泉駐車場 (0:00) → 峰山登山口 (0:15) → 峰山 (1:00)→藤野やまなみ温泉駐車場(1:40)
歩行距離:約3.2km
累積標高差:登り 306m、下り 306m
合計所要時間:1時間10分

●【MAP】藤野やまなみ温泉

●篠原の里駐車場から石砂山・石老山コース

石砂山山頂。ゆったりと過ごせる広い山頂で、春には美しいギフチョウにも会えるだろう

 関東百名山にも名を連ねる石老山は、相模湖周辺では陣馬山と並びポピュラーなハイキングスポットとして知られている。駅から登山口までは路線バスも出ており、パンフレットも豊富だ。

 今回紹介するコースは、石老山に勝るとも劣らない魅力を持った山、石砂山と一緒に登ろうというものだ。

 石砂山には、日本固有種のアゲハチョウの仲間で絶滅危惧Ⅱ類に指定されているギフチョウが生息しており、関東で観察できる場所は、ここ石砂山のみともいわれている。

 桜の咲き始める3月末頃、美しい羽で飛び回る姿をカメラに収めようと、多くのハイカーが訪れる。

 登山の拠点は、両山の真ん中に位置する「篠原の里(しのはらのさと)駐車場」だ。集金箱に500円を入れることで1日利用できる。石老山と石砂山どちらかに登ったあと、駐車場に一旦戻ってくるので、ザックの荷物の調整も可能だ。

 最後に、このコースの注意点だが、石砂山にはヤマビルが発生することを忘れないでほしい。ギフチョウの羽化時期には、徐々にヤマビルも活動期に入るので対策は怠らないことだ。

篠原の里駐車場から石砂山・石老山コース【所要時間】
篠原の里駐車場 (0:00) → 石砂山登山口 (0:30) → 石砂山 (1:20) → 篠原の里駐車場 (2:20) → 石老山 (3:50)→篠原の里駐車場(4:50)
歩行距離:約9.0km
累積標高差:登り 807m、下り 807m
合計所要時間:4時間50分

●【MAP】篠原の里

●軍刀利神社から生藤山と藤野15名山最高峰・茅丸ピストンコース

藤野15名山最高峰・茅丸山頂。視界が開け、美しい景色が広がる

 いよいよ最後は、藤野15名山最高峰を目指そう。茅丸の標高は唯一の1,000m超えだ。

 スタート地点は、中央高速道・上野原ICより20分ほどにある軍刀利(ぐんだり)神社で、境内の駐車場を利用することができる。

 神社には軍刀を模したオブジェが飾られているのだが、アニメに登場する聖剣のようで格好がよく、周囲の鬱蒼とした群生林とのギャップが楽しい。

 境内の裏手から進んでいこう。「関東ふれあいの道」を通り、まずは山梨百名山の1つでもある生藤山へ。そして、すぐお隣にある茅丸山頂を目指す。丹沢の山並みに加え、どっしりと構えた富士山が見える茅丸山頂。1,000m超の標高は登頂の達成感もひとしおだ。

 ちなみに茅丸の先は陣馬山へと続くのだが、少々長い道のりになるので、今回は来た道を引き返すピストンコースを紹介した。

軍刀利神社から生藤山と藤野15名山最高峰・茅丸ピストンコース【所要時間】
軍刀利神社(0:00) → 生藤山 (1:15) → 茅丸 (1:40) → 軍刀利神社 (2:45)
歩行距離:約4.9km
累積標高差:登り 588m、下り 588m
合計所要時間:2時間45分

●【MAP】軍刀利神社

■藤野15名山をアート作品とともにめぐる

自然とアートの町・藤野。何度訪れても新しい発見のある町だ

 全7コース、15座をめぐる道のりを紹介した。各コースがそれぞれ違った魅力を持っているが、すべてに言えることは、町に愛された山々であり、町の人々の手によってハイカーたちは安全に登山を楽しむことができるということだ。

 藤野駅に隣接した観光案内所「ふじのね」では、藤野15名山制覇を目指す人のためにスタンプカードを発行している。自身とともに山頂標柱と撮った写真を提示するとスタンプを押してもらえる。

 なくなり次第終了とのことだが、15座制覇の暁には缶バッヂのプレゼントがいただける。もちろん筆者も入手済みだ。

 期限などは設けられておらず、焦らずゆっくり藤野の町を楽しんでほしいという思いが込められているそうだ。

 これから涼しくなり、低山歩きには最適な時期だ。ぜひ藤野15名山を歩いて、その魅力を体感してほしい。

芸術の町・藤野の「緑のラブレター」