編笠山(あみがさやま)は、八ヶ岳連峰の最南端に位置する標高2,524mの山だ。「山梨百名山」や「甲州百山」に選定されている。標高が2,500mを超える山でありながら片道3時間ほどで登頂でき、山頂まで危険な箇所も少ないので、初級者にも挑みやすい。山頂からは南アルプスや富士山が望めるほか、南八ヶ岳を代表する峰々の荘厳な景色を楽しむことができる。今回は編笠山の日帰りルートを紹介する。

■観音平から押手川を経由し、青年小屋へ

隣の西岳からみた編笠山。編笠のような山容が山名の由来となっている

 編笠山へ直接登るには観音平(かんのんだいら)から登るか、富士見高原から登るかだが、今回は観音平からのルートを紹介する。

 観音平は中央自動車道・小淵沢ICから約15分で到着でき、アクセスがしやすく、駐車場までの道中も舗装路で運転しやすかった。

 観音平から登山をスタートすると、序盤は緩やかだが、徐々に勾配が急になってくる。

登山口近く。南に面した登山道なので朝から日がよく入る

 山頂付近までは樹林帯歩きがメインとなるが、南に面した登山道なので日が入りやすい。紫外線対策はしっかりとしておこう。特に夏はスタート時には長袖でも行動中は半袖になることもあり、うっかり対策しないまま肌を露出しないよう気をつけたい。

 観音平から約1時間、雲海(うんかい)分岐点に到着する。ベンチがあり、休憩するのにぴったりな場所だ。筆者が、2023年の8月末に訪れた時は木々の間から雲海が見え、その向こうには富士山も望むことができた。

雲海の分岐点から望む富士山

 雲海分岐から押手川(おしてがわ)分岐までは約40分、山頂に近づくにつれて勾配は急になっていくので意識的にペースを落とし、心肺に負担のかからないように歩きたい。

 押手川分岐までは途中、いくつか平坦になっている箇所もあり、ちょうどいい間隔で呼吸を整えながら登ることができた。

 押手川分岐からは直登で編笠山を目指すルートと、巻道で青年小屋(せいねんごや)へと続くルートがある。

 直登ルートの方が山頂までの所要時間は短いが、勾配は急なため、巻道を使い青年小屋を経由して編笠山を目指した方が体力的な負担は少なくて済む。以前、筆者が初めて編笠山へ訪れた時に直登ルートを選んだが、山頂までの急勾配はなかなか登りがいのある区間だった。

 しかし巻道とはいえ、平坦な道ではなく、高低差のある段差や、短いがハシゴのかけられた箇所もあるのでくれぐれも油断はしないでほしい。

標高を上げるとゴロゴロとした石が目立つようになってくる

 押手川分岐から約1時間15分、青い屋根が特徴的な山小屋が見えてくる。青年小屋にはもう一つユニークな特徴があって、入り口にかけられている「ちょうちん」が有名だ。ちょうちんには「遠い飲み屋」と書かれており、初めてみた時は思わず「確かに」とうなずいてしまった。

「遠い飲み屋」と書かれたちょうちんの前では多くの登山者が訪れた記念に写真撮影をしていた

 小屋のまわりにはベンチやテーブルが設けられているので休憩し、呼吸を整えてから登るといいだろう。