■ミステリーランチのバックパック開発のベースにある3つの情報

関口さんは本国のミステリーランチとも頻繁にやりとりをしている

 続いて、関口さんに本国からレイディックスの話を聞いたときの印象と、開発時にターゲットにしたユーザー層について伺いました。

 「我々、日本サイドからも軽量なバックパックの開発については要望を出していたので、まず、『ついに出したな!』」と興奮したのを覚えています。ターゲットとしたユーザー層は、軽量化はしたいけれど、極端なULパックには抵抗があるハイカー。そこの受け皿になるようなモデルを作ろうというのが、レイディックスの開発コンセプトです」

 雑誌が情報源の中心だった時代よりも、SNSや動画サイトで簡単に情報が得られる現代だからこそ、UL界隈で流行っているものを取り寄せて実物に触れてから「思っていたものと違う!」とユーザーが感じることも増えているようです。

 「今までは腰荷重をしっかりするバックパックを使ってきたけれど、もう少し軽量化したいというユーザーが極端なULギアに触れると、“そこまでは求めていないんだよな……”と感じる方は実際に多いと思いますよ。憧れだけで無理にUL系のバックパックを導入すると、今まで通りの重たい装備を満載にして背負ってしまうような、正しい使い方ができていない状況が起こりうるわけです。そうしたユーザー層に適正なギアを作ろうというのが、今回のミステリーランチの動きなのだと思います」と、土屋さん。

軽いだけではなく、背負いやすさと使いやすさのバランスも良いことは、レイディックスならではの特徴

 ミステリーランチは、ユーザーの声に耳を傾け、ニーズを徹底的に吸い上げることから製品開発を始めるそうです。具体的には、3つの情報が彼らのバックパック開発の核となっています。

 「まず1つめは、コアなロングディスタンスハイカーから、なにが重要なのかを直接ヒアリングすること。2つめは、リテイラーの中でも特に専門知識が深い個店さんに、ユーザーが何を望んでいるかをヒアリングする。3つめは、大手のナショナルビッグチェーンみたいなところに、返品データ情報をもらうこと。このデータは、どのメーカーのどの商品が、どのような理由で返品されたのかがわかるものです。この3つを擦り合わせることで、ユーザーが真に求めているバックパックが見えてきます」

 ざっくり言うと、こうした過程を経て生まれた軽量バックパックが、レイディックスというわけです。