●1歩進んで2歩下がる!? 中々進まぬ「蟻地獄」の先の「上二ツ塚」へ

 下二ツ塚山頂から見上げる上二ツ塚は、手を伸ばせば届きそうなほど、すぐ目の前にあるように見える。標高差にして150mだが、この150mが遠い。なぜなら、急な傾斜のうえに砂の登山道のため、登ったそばから滑ってしまうからだ。下二ツ塚の登りに苦労した方は、無理せず引き返すのも懸命な判断だ。

 なお、登りは大変苦労する御殿場口の登山道だが、富士山頂からの下山道としては人気がある。その理由は、砂の登山道をまるで駆け下りるように下山できるからで、「大砂走り(おおすなばしり)」とも呼ばれている。

 なんとか登り切った上二ツ塚山頂は広々としていて、宝永山と富士山が双子のように並ぶ姿を見ることができる。なお、筆者は2023年の開山中である7月に上二ツ塚に登ったが、「大砂走り」を使って、ものすごい砂煙とともに富士山頂から下山する登山者の勇姿を偶然にも見ることができた。

下二ツ塚山頂の祠は、雨風に晒されてか、かなり傷んでいる
砂と砂利に覆われた上二ツ塚から宝永山を望む
砂が滑ってついつい早足になる、上二ツ塚からの下山道

●【MAP】富士山御殿場口新五合目 第二駐車場

■須走口五合目から樹林帯を歩く「小富士(こふじ・1,979m)」

砂地で覆われた「小富士」山頂から、樹林帯越しに望む富士山
山頂へ通じる登山道は、開山時期以外は閉鎖されている
小富士山頂から仰ぎ見る雄々しき富士山

 続いて紹介するのは、須走(すばしり)口五合目が起点となる、小富士(こふじ)。須走口五合目の標高は2,000m、富士山の樹林帯を散策できるのが特徴で、砂と軽石に覆われた御殿場口新五合目とは趣が異なる。

 駐車場からほど近い小御岳神社(こみたけじんじゃ)の前から遊歩道に入り、小富士を目指そう。往復1時間ほどの行程のため、体力に自信のない登山者も安心だ。

 駐車場は約200台駐車可能だが、2024年は7月10日午前10時よりマイカー規制の対象となるので注意しよう。駐車場付近にはトイレとインフォメーションセンターのほか、きのこ料理が名物の山小屋もある。

きのこ料理が有名な五合目の山小屋「山荘菊屋」

●須走口五合目までのアクセス

 東名高速道路の足柄(あしがら)IC、または御殿場ICで下り、「道の駅すばしり」を目指そう。マイカー規制中は、例年道の駅から五合目まで定期運行しているシャトルバスを利用してアクセスできる。2023年度のシャトルバスの運賃は、片道1,220円、往復2,100円だ。なお小学生以下はそれぞれ半額となっている。

 規制のない時期は「ふじあざみライン」を使用してアクセスが可能で、通行と須走口五合目駐車場への駐車は無料だ。

標高2,000mだが緑の多い須走口五合目の駐車場

●「小富士」登山コース紹介

須走口五合目から小富士までは、なだらかな樹林帯を散策できる

 道中はカラマツなどが生い茂る森林エリア散策がメインで、アップダウンも少なく、体力に不安のある初心者でも安心して絶景を楽しめる。

 森林の中の高山植物を探しながら歩くと、見晴らしのよい砂浜のような一帯に着く。そこが小富士の山頂である。ここからは迫力ある富士山はもちろん、箱根や山中湖方面の山々を眺められる。

小富士山頂からは山中湖や箱根も一望できる

●【MAP】須走口五合目 駐車場

■開山前でも富士山を満喫できる中腹の山頂!

 富士山が開山しハイシーズンを迎える前に、十分に富士山の魅力が満喫できる空いている中腹の山頂を目指すコースを紹介した。

 御殿場口新五合目は、開山期間中でもマイカーアクセスが可能で、混雑に見舞われることが少ないのでおすすめだ。砂の道には苦労させられるが、その先にある富士山と宝永山のコラボレーションを堪能してほしいので、まずは下二ツ塚、続いて上二ツ塚と挑戦してほしい。

 須走口五合目から行く小富士の魅力は、富士山の樹林帯を歩けることと、そのコースの手軽さ。約1時間のハイキングで、すばらしい景観が待っている。

 ぜひこの夏、富士中腹から仰ぎ見る雄大な富士山を楽しんでほしい。