都心からのアクセスのよさに加え、ミシュラン三つ星の評価が後押しとなり、年間250万人前後の登山者が訪れる東京都八王子市の高尾山(たかおさん・標高599m)。通年、ハイカーと観光客が訪れる人気の山だが、筆者のおすすめはヤマユリが見頃を迎える7月だ。

 高尾山では自生のヤマユリはもちろん、地域ぐるみで育てられてきたヤマユリが一斉に登山道を彩る様子は圧巻のひとこと。7月、鮮やかな白や黄色の大輪と、甘い香りに包まれ、高尾山は最盛期を迎える。今回は、7月上旬〜中旬までに見頃を迎えるヤマユリを目一杯楽しめるコースを紹介したい。

高尾山口駅からヤマユリの咲く1号路で山頂へ(国土地理院地図より引用)

■高尾山口駅から参道を通り、高尾山登山口へ(高尾山口駅〜高尾山登山口)

多くの天狗伝説・天狗信仰がある薬王院

 高尾山の登山口へは、京王高尾線の高尾山口(たかおさんぐち)駅より直接徒歩でアクセスができ、周辺には土産物屋や飲食店、自動販売機が並ぶ。さらに、山頂へ至る登山道も多く、初級ハイカーから上級者まで、好みのコースを選択できる。体力に自信のない人や子ども連れにはケーブルカーやリフトもあるので安心だ。

■薬王院の表参道! 高尾山のメインコース、1号路を歩く(高尾山口〜高尾登山電鉄 清滝(きよたき)駅〜高尾山駅)

 筆者のオススメは1号路。1号路は、高尾山中腹にある薬王院の表参道にあたる整備の行き届いた登山道で、初級ハイカーや登山デビューにおすすめのコースだ。

 勾配はそれなりに急なので、焦って呼吸を乱さぬよう、周囲の緑や鳥の声に耳を傾けながらゆっくり進もう。40分ほどでリフト山上駅(さんじょうえき)に着くが、その手前からヤマユリが見える。高山植物のような小さくて繊細な花とは違う、インパクト抜群の大輪の花だ。

 山上駅からさらに5分程度でケーブルカー「高尾山駅」に到着する。周辺はリフトやケーブルカーで上がってきた人と、1号路を登ってきた人が合流するエリア。晴れていればスカイツリーまで見える展望台や茶屋などが並ぶ。展望台周辺には多くのヤマユリが咲き誇り、登山客を出迎えてくれる。

 なお、展望台にある夏の人気ビアガーデン「高尾山ビアマウント」は、今季6月15日開始予定なので、ヤマユリ見物と合わせて計画してみるのも良い。ただし、アルコール摂取のあとはケーブルカーの利用をお願いしたい。

​ケーブルカー山頂駅周辺の土産店で販売している「天狗焼」
高尾山さる園・野草園。飼育員とお散歩中の猿に出会えることも
浄心門を通る参拝客を見守る天狗の像

■歩きやすい登山道を進み、薬王院を経て高尾山山頂へ(高尾山駅〜高尾山さる園〜薬王院〜高尾山山頂)

 高尾山駅周辺を見学しながら1号路をさらに進もう。スギの巨木「高尾たこスギ」や「高尾山さる園・野草園」を過ぎたら、薬王院の「浄心門(じょうしんもん)」をくぐり、赤い灯籠(とうろう)が並ぶ道を進む。展望台周辺から薬王院にかけて、筆者イチオシのヤマユリの群生エリアである。

 古くから自生するヤマユリの中には、一株に10の花をつけるものもある。また、7月初旬は鮮やかな青や紫のヤマアジサイとのコラボレーションが見られるので、ぜひ楽しんでほしい。

 さて、浄心門から10分ほどで、薬王院手前の分岐が現れる。舗装され、緩やかな登り坂の女坂と、急勾配の階段が待ち受ける男坂だ。体力に合わせて好きな方を選ぼう。いずれのコースも10分程度で薬王院本堂に到着する。

高尾山の山頂標識は、記念撮影する登山者で長蛇の列ができる

 薬王院本堂から山頂へは20分ほどの道のりで、階段を使い境内を抜け、なだらかな土の道を進む。山頂はもうすぐだ。山頂は広く、茶屋や、観光案内を行うビジターセンターもあり、多くの人がお弁当を広げて昼食を楽しんでいる。天気の良い日には富士山が見える。

高尾山山頂の展望。快晴なら富士山が見えるはずが…… この日は見えなかった
山頂とは思えぬほど店頭の品揃えは豊富だ
鮮やかな大輪を咲かせる八王子市花ヤマユリ
ヤマユリとアジサイの美しい共演