大河ドラマ『光る君へ』の主人公紫式部が記した『源氏物語』。その最後の十帖の舞台となっている京都府宇治市は、源氏物語ゆかりの地として有名である。京都市内に比べて比較的観光客の少ない宇治だが、10円硬貨でおなじみの平等院や宇治抹茶の老舗など見所の多い街だ。
今回は、そんな宇治の定番の観光名所と、穴場スポットを巡るハイキングコースを紹介する。
■京阪宇治駅に到着。宇治神社と宇治上神社を参拝
出発地点は、京阪宇治駅。京都駅からは約40分、大阪駅からは約1時間の距離だ。駅を出て右手には、宇治川とそれを渡る宇治橋がある。
まずはこの宇治川沿いの道を真っ直ぐ進み、宇治神社に向かう。途中で宇治抹茶のお店や茶そばを出す店などもあり、ゆったりと街歩きも楽しむことができる。
川沿いの並木道に癒されながら歩いていくと、約10分で宇治神社に着いた。学業成就・合格祈願の神様として親しまれており、鎌倉時代に建立された本殿は国指定重要文化財となっている。
こぢんまりとした神社だが、いたるところにあるうさぎの姿に目を引かれる。
案内を読んでみると「ご祭神菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)が宇治に向かう途中で道に迷った際、一羽の兎が現れて振り返りながら先導して道案内をした」という故事があるとのこと。
また、古代の宇治の地は「菟道」と書いて「うじ」と呼ばれており「兎」の字が使われていた。どうやら宇治とうさぎは、古くから縁が深いようだ。うさぎを探して宇治の街を歩くのも面白いかもしれない。
宇治神社を抜けて少し歩くと、すぐに宇治上神社の鳥居が見えてくる。宇治上神社は神社建築では日本最古の本殿があり、世界文化遺産にも指定されている。
拝殿には鎌倉時代前期、本殿には平安時代前期に伐採された桧(ひのき)が使われているそうで、その精密で美しい建築に思わずため息が出てしまう。
参拝してから授与所をのぞいてみると、こちらにもうさぎみくじやお守りなど、うさぎをモチーフにしたアイテムがたくさん。旅の土産にもぴったりである。
■大吉山展望台を目指す
さて、宇治上神社をあとにして、大吉山(だいきちやま)の登山口へと向かう。神社を出て山沿いの道を道なりに歩くと、右手に階段と石碑が見えてくる。源氏物語宇治十帖の三帖「総角(あげまき)」ゆかりの地である。ここから、大吉山(仏徳山とも呼ばれる)の標高88mにある展望台を目指す。
階段を上ってみると、広くながらかな坂道が続く。観光客や地元民だと思われる人もちらほら。
途中ですれ違ったご年配の方と話したところ、毎朝のようにボランティアの方々が山を清掃しているそうだ。なるほど、どうりで道が綺麗なわけである。しっかりと整備されている山なので、初心者でも安心して登れるだろう。
その人も毎日のようにこの山を登っているらしく、登山が近所のみなさんの健康の秘訣だそうだ。
心地のよい木漏れ日の中、ゆったりとした気持ちでなだらかな坂道を登っていく。約15分もすれば大吉山の展望台に到着だ。
展望台から宇治の街を一望しながら、ほっと一息。先ほど訪れた宇治橋や宇治上神社、有名な平等院などの名所を見つけながら眺めるのも楽しい。