■桜の一丁平と紅葉のもみじ台で四季を感じよう
小仏城山から高尾山へ向かう登山道はなだらかで、歩きやすい道が続く。高尾山方面から来ると上りが多く感じるかもしれない。ほどよい下りと平坦な道で景色ものんびり見ることができる。
小仏城山で昼食を済ませれば、体力も温存され心地よく歩けることだろう。このあたりは巻き道も多いので、要所要所の標識を見ながら進んでもらいたい。
小仏城山から高尾山までのルート上にある「一丁平の千本桜」は有名で、春の時期になると多くの人で賑わうスポットだ。一丁平には展望デッキもあり、富士山と丹沢の山々を眺められる。背後には屋根付きの休憩スペースもあり、少しのんびり山の景色を堪能するのもいいだろう。
一丁平からもみじ台までは、整備された道と階段が続く。もみじ台は文字通り、紅葉シーズンに鮮やかな赤色に彩られる。例年ボジョレーヌーボーが解禁される頃、この下で飲むのが恒例となっているリピーターもいるほどだ。もみじ台は高尾山から10分も歩けば着く場所なので、紅葉シーズンはここまで来る価値がある。
■夕日をとるか、蕎麦をとるか
もみじ台から最後の目的地、高尾山へ到着すると、人の数・服装も一気に変わってくる。バックパックもなく、気軽なノリで来てしまったような人達も少なくない。実際、それでも来られてしまうのが高尾山であり、その手軽さも魅力なのかもしれない。
のんびり縦走してくると、リフトやケーブルカーの最終便の時間も近づき、ピーク時と比べ観光客は少ない。
さて、ここで2つの選択肢から一方を選ばなければならない。山頂で待機して夕日をとるか、下山して蕎麦をとるかである。
高尾山の山頂から眺める夕日は素晴らしい。高尾山口駅から高尾山だけを登ってすぐに下山してしまう人は意外と知らないはずだが、夜景も素晴らしい。この景色をファインダーに納めたくて日が沈むのを待っている人もいるぐらいである。
高尾山は灯りや舗装路のコースもあるので、ライトは必須だが安心して下山できるのも特徴の一つである。
下山して蕎麦を食べる方を選ぶのなら、ぜひ髙尾山ケーブルカー清滝駅前にある「高橋家」を訪れてもらいたい。昼間は必ず行列ができる店だが、ピークの時間帯を避ければすんなり入れる。
高橋家は今から200年前の江戸時代・天保年間に創業し、高尾山を訪れる登山客や信仰者、観光客などに長年愛されてきた老舗店だ。店内には樹齢150年余りの柿の大木が根を下ろし、迎えてくれる。落ち着いた店内で食べる蕎麦は、なぜかホッとする。
高橋家の閉店は午後5時。夕日を待って下山の時間も考慮したら、店は閉まっている。筆者は夕日と蕎麦でいつも迷ってしまう。
■人気の高い奥高尾の山々! ぜひ一度足を踏み入れてみて!
今回は、高尾山から先の奥高尾の中でも比較的初心者向けで、コースタイムに余裕のある小仏城山〜高尾山ルートを紹介した。
登山用のGPS地図アプリを展開するコミュニティサイト「ヤマレコ」が、2023年3月〜2024年3月までの1年間で調査した「全国人気の山ランキング」では、高尾山が1位に選ばれたほか、2位に小仏城山、5位に景信山が選ばれるなど奥高尾の山々が多くランクインしている。
多くの登山者が利用するアプリの調査結果からも馴染みやすく気軽に登れて、充実感も味わえる山であることがわかるだろう。1600種類の花々、100種類の野鳥、30種類の動物、4000種類の昆虫が生息していると言われ、まさに「自然の宝庫」の山々である。
2020年6月文化庁が認定する「日本遺産」に東京都で初めて認定された高尾山。フランスで発売される日本の観光地を紹介するガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」の三つ星に京都や奈良、富士山と並んで選ばれてたことから外国人観光客も増え、訪れる人数は年々増加傾向だ。
しかし奥高尾に一歩踏み込むと、自然豊かで静かに散策できる非日常がそこにはある。シャッターチャンスのポイントも数多くある。
縦走後は高尾山への玄関口でもある京王線高尾山口駅内にある「極楽湯」で、疲れた身体を癒して帰るのもいいだろう。7種類の風呂に浸かれば、1日を満喫した達成感を感じるはずだ。
達成感や心地よい疲労感は、色々な角度からの富士山や空や雲、林間からの風や様々な景色を堪能し、人との触れ合いに心和んだからなのかもしれない。
グルメや絶景を堪能できる奥高尾に、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。