英彦山南岳山頂付近からの景観

 福岡県添田町(そえだまち)にある英彦山(ひこさん)は古くから日本三大修験山として多くの登山者で賑わい、日本三大彦山(ひこやま)としても知られている。ほかにも日本二百名山や日本百景などにも選ばれており、歴史の深さから国の史跡としても指定されている。

 北岳・中岳・南岳の3つの峰からなる標高1,199m(最高点は南岳)の山。急峻な道や、鎖場もあり、体力を必要とする。冬は四天王寺の滝の氷瀑が見られるなど、見所と登りがいのある山である。

 英彦山は山伏の修行場であるため、急峻な登山道や、通行できない道もあり、気を付けてほしい点が多い。今回は実際に登ってわかった5つの注意点を紹介する。英彦山に登る際の参考になれば幸いだ。

■おすすめのルート

 南岳への一般的なルートは「別所駐車場」から「奉幣殿(ほうへいでん)」を通って、「鬼杉(おにすぎ・杉の巨木)」方面にまっすぐ南岳を目指すルート。鎖場もあり、ほどよく登りがいのある往復約5時間のコースだ。

 筆者は「四天王寺の滝」を見るため、「奉幣殿」から「四天王寺の滝」経由で南岳を目指すルート(往復約5時間)を進んだ。

 ちなみに北岳は山頂からの景色が素晴らしく南岳より登山時間は短くて済む。山頂付近は広く、休憩にも適しているため、景色を楽しみたいなら北岳がおすすめだ。

■英彦山の注意点

 南岳は登りやすいルートがある一方で、注意の必要な箇所や、登る前に知っておくべき情報もある。

●注意点1:頂上付近に鎖場あり

頂上付近の鎖場。慎重に進みたい

 南岳を奉幣殿側から登山する際は鎖場に気を付けたい。英彦山の鎖場は登りやすく、危険は少ないとはいえ、落差のある岩場もあり、気を抜くと大けがにつながるので慎重に進もう。北岳を豊前坊(ぶぜんぼう)登山口から登るルートには鎖場はないが、急峻で険しい道のりである。

●注意点2:四天王寺の滝に水がないことも

水がない四天王寺の滝

 四天王寺の滝は、滝つぼがある水量豊富な滝ではない。天候の状況次第では水がないこともある。滝が見たくてルート計画を立てた筆者は、水のない状況に肩を落とした。後日知ったところによると、季節や天候、気温次第では「幻の氷瀑」が見られるという。その可能性が高いのは気温が下がる12月以降とされているが、数年に一度見られるかどうかの確率のようだ。

●注意点3:四天王寺の滝経由で山頂を目指すと急峻な登山道あり

ロープがないと登れないほどの急斜面
壁に張り付くようにして登る岩肌

 四天王寺の滝を経由して南岳を目指すルートは、崖崩れの影響で道が狭く、急斜面が続く。山頂に近づくにつれ、山にしがみつくようにして登らないといけない箇所もあるため注意したい。

 登山アプリにも中級者以上向けの表示がある。ルートの途中では登山道を示すテープがない場所もあり、道迷いにも注意が必要である。紙地図&コンパスや地図アプリの準備を忘れないようにしたい。

●注意点4:英彦山中岳神宮上宮は工事中のため立ち入り禁止(2025年12月まで)

南岳の隙間からのぞく神宮上宮

 英彦山中岳の山頂には神宮上宮(じんぐうじょうぐう)があるが、現在は工事中で立ち入りができない(工事は2025年12月までの予定)。中岳への登山道自体が通行止めになっており、その姿を間近に見ることはできない。

 工事の影響で中岳を通れないことから北岳、中岳、南岳の縦走はできないので登山計画を立てる際には回り道などをよく確認しておこう。

●注意点5:南岳山頂からの景色はほぼゼロ

南岳からかろうじて見えた景色

 南岳は英彦山の最高峰だが、山頂は木々が多く周辺の景色はほぼ見られない。展望が素晴らしいのは山頂手前の開けたスペースなので覚えておこう。

■目的を明確にして登る

 英彦山の登山では、「神宮上宮」「四天王寺の滝」「山頂付近からの景色」のどれを見たいのかで、時期やルートを確認して計画をたてる必要がある。

 今回筆者が歩いた、四天王寺の滝経由の南岳ルートは中級者以上であり、雪が積もればさらに危険性は高い。筆者と同じルートを歩く場合は必ず経験者と同行し、積雪期は四天王寺の滝で引き返すプランが望ましい。

 また、どの山に登る際にもいえることだが、山頂付近の鎖場などの危険箇所での装備や経験は不可欠だ。難しいと感じたら無理せず引き返すことも視野に入れておこう。危険を最小限に抑えて、登山を楽しめるようにしたい。

●【MAP】別所駐車場