■飯山市で開催された「全国トレイルメンテナンスシンポジウム」
飯山市で開催された「全国トレイルメンテナンスシンポジウム」は、NPO法人信越トレイルクラブが主催し、日本全国から約170名の方が来場し満席となっていました。
●開催の目的
近年では、“歩く旅”を楽しむための「ロングトレイル」が日本各地に整備されはじめ、多くの方に親しまれています。例えば、このシンポジウムを主催したNPO法人信越トレイルクラブが整備を行うロングトレイル「信越トレイル」は、長野と新潟県境の里山を巡る全長110kmのトレイル。110kmとは、無理のないペースで大人が歩いて10日かかるくらいの距離です。
ロングトレイルの維持管理に関しても同じように課題があります。「全国トレイルメンテナンスシンポジウム」では、アメリカ東部にある3500kmもの距離があるロングトレイル「アパラチアントレイル」の南部地域マネージャーSarah Adams氏と、サイエンス&スチュワードシップ副部長のMatt Drury氏を招き、講演とパネルディスカッションが行われました。「全国トレイルメンテナンスシンポジウム」は、持続可能なトレイルメンテナンスについて情報を共有し、今ある課題について共に考えるきっかけとするため開催されました。
●「アパラチアントレイル」の維持管理
世界的な人気を誇り、100年以上の歴史を持つアパラチアントレイルについて、その歴史と維持管理に関する内容の講演がありました。この講演を担当したSarah Adams氏は、アパラチアントレイルの保護団体(以下ATC)の南部地域マネージャーで、ボランティアのサポートや整備を担当しています。
開通するまでに15年をかけたアパラチアントレイルは、現在30のボランティア団体と80以上の行政の土地管理機関、ATCが共同で管理しています。ボランティアクラブが管理しているのは、ナショナルパークやフォレストサービス(日本で言う林野庁)の土地など幅広く、想像を超える活動領域です。また、興味深いのはボランティアクラブと行政機関、ATCがそれぞれ平等な立場で管理している点で、アメリカでもユニークなやり方とのことです。3者の役割をまとめたガイドラインが存在し、これも長年の努力で少しずつ行政と信頼関係を築いてきた賜物。何十年もボランティアを続けている方もいるそうで、スケールの違いを感じました。
ATCではボランティアの方へ、なぜ保護をする必要があるのかということを、丁寧に教育しているそうです。そして、“自分が自然を蘇らせている”という楽しい体験をすることで、満足感があり継続するモチベーションに繋げています。また、「どうやってその仕事についたの?」と聞かれるなど、フォレストサービスのユニフォームに憧れている子どもがたくさん存在するそう。誇りをもってトレイルに向き合う大人の姿が、次世代の育成になっているのですね。
●信越トレイルクラブとアパラチアントレイルの友好トレイル締結セレモニーを開催
信越トレイルは、アパラチアントレイルをお手本に2000年に構想をスタートし、2003年と2023年に視察に行っています。このシンポジウムの中で、信越トレイルクラブとアパラチアントレイルの友好トレイル締結式が行われました。
今回、「奥信濃トレイル保全ワークショップ」と、「全国トレイルメンテナンスシンポジウム」に参加したことでトレイルの保全や維持管理の現状や課題を少し理解することができました。登山道を整備をしてくれる方がいるからこそ、存分に山を楽しませてもらっていたことに感謝し、次はトレイル保全のワークショップを実際に体験したいと思っています。
「奥信濃100」について:https://okushinano100.com
木島平村について:https://kijimadaira.org/
信越トレイルについて:https://www.s-trail.net/