■一番の目玉は、VRゴーグルで登山体験ができること

VR体験の部屋では、VRゴーグルをつけて妙義の稜線や岩場にいるかのような体験ができる(提供:富岡市妙義ビジターセンター)
右上のVRゴーグルはメガネの上からも装着可能、左下のコントローラーはコースを選ぶ時に使用するので、コントローラーを持たなくても体験を楽しむことができる(提供:富岡市妙義ビジターセンター)

 妙義ビジターセンターのオープンの報道を見て、筆者が一番関心を持ったのは「VRゴーグルで登山体験ができる」ということだ。VRとは、Virtuai Reality の略で「仮想現実」と訳される。「VRを通すことによって、現実ではないけれど、実体験に近い体験が得られる」というものだ。

 妙義山はいくつかの山の総称だ。南側は表妙義、北側は裏妙義と呼ばれる。表妙義は、白雲山(はくうんざん)、金洞山(こんどうさん)、金鶏山(きんけいさん)と呼ばれる山域からなり、白雲山の最高峰は相馬岳(1,104m)、金洞山の最高峰は東岳(1,094m)である。

 標高はさほど高くはないが、岩峰と長い鎖の連続だ。様々な登山コースがあり、一般登山者が岩登りを楽しむことができるコースもあるが、スキルや装備が求められるコースも多い。これらのコースは国内でも最上級クラスの難易度とされ、毎年死亡事故や重傷に至る滑落事故が発生しているほどなので、ピークハントや縦走は、経験と登攀技術、ザイルなどの装備、体力や腕力が必要である。

 筆者は登山初心者だったころ、白雲山登頂を試みたが、腕力と技術が不足して、垂直の鎖に撤退したという苦い経験を持つ。そんな妙義山だから、VRゴーグルを通して登山を体験できるというのは大変魅力的に感じた。

 妙義ビジターセンターでは、まず係の方から説明を受け、VRゴーグルをつける。

 VRでの登山体験は、表妙義、裏妙義、金鶏山の3コースがあり、アクションカメラやドローンで撮影した映像を通じて、実際にその場に立っているかのような体験ができる。

 それぞれ体験したが、臨場感があり、とても面白かった。見上げればこれから登攀する長い鎖。真下を向けば深い谷底が足元に広がる。身体を180度回せば、屹立する岩峰や眼下の麓の景色など、後方の光景も見渡すことができる。

 VR登山体験ができるのは、難易度の高いルートが多い。だからこそ、VRで疑似体験できるのはありがたい。VR体験ならやってみたいと思う人もいるのではないだろうか。中でも金鶏山コースは岩がもろく落石などが危険なため、現在入山禁止となっており、ゴーグル越しとはいえ、自分がその場にいるかのような臨場感を味わうという貴重な体験をすることができた。

 なお、13歳以下は斜視などの問題が出ることがあるため、体験できないとのことである。

■妙義神社は、徳川将軍の信仰も厚かった歴史ある神社

彫刻が素晴らしい妙義神社の拝殿(撮影:笹田けいこ)
白雲山への登山口は奥の院への道でもあるので、荘厳な雰囲気だ(撮影:笹田けいこ)

 妙義山の東麓に、荘厳なたたずまいの妙義神社がある。ビジターセンターからは900mほど離れている。妙義神社は創建537年といわれる、大変古い神社である。

 江戸城から見て北西の方向にあるため、方位守りとして歴代徳川将軍の信仰も厚かったそうだ。本殿や唐門などの彫刻も素晴らしい。現在のものは1756年の建造で、彫刻は日光東照宮と同じ作者によるものだと伝えられる。

 妙義山の斜面に建てられているので、石段の連続である。

 本社脇に白雲山登山道入り口がある。白雲山の中腹にある「大の字」「奥の院」を経て白雲山に至る。

 大の字は、江戸時代には藁で作られ、妙義神社に直接お参りできない人が、近隣の安中、松井田宿から見える大の字を拝んだそうです。今は、鉄で作られています。

遠くからも目立つ「大の字」。ここからの眺望は素晴らしいが、なかなかの鎖を登らなければならない