山でしか味わえない壮大な景色を見たり、美しい自然に身をおいてリフレッシュしたりできるのが登山の魅力だ。しかし、登山にはケガや遭難のリスクが常に存在する。登山における遭難は、毎年どれくらい起きているか知っているだろうか? 山岳遭難(※)の情報は、警察庁がデータを公表しており、2023年夏期の情報が更新されたばかりだ。そこで、そのデータをもとに山岳遭難の現状を解説する。登山のリスクを正しく認識し、安全に登山を楽しもう。

※山岳遭難:登山や山菜取り、観光などで山に入り遭難した人。目的別において、登山の割合は8割ほど

■2023年夏期の山岳遭難者数は809人で過去最多!

2023年夏期における山岳遭難の推移 (出典:警察庁ウェブサイト 山岳遭難・水難|警察庁Webサイト https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/sounan.html)を加工して作成

 コロナ禍による行動制限がなくなり、登山人口は再びにぎわいをみせている。そんななか、2023年夏期(7~8月)における山岳遭難者数は809人、死者・行方不明者は61人と、ともに統計が残る1968年以降で最多となった。遭難者数は前年比で23人増加。ちなみに、2022年における年間の遭難者数は3506人だった。

 続いて、山岳遭難の発生場所は長野県が一番多く、101人に上っている。次いで静岡県が85人、富山県が59人だ。日本アルプスや富士山など、人気のある山で遭難事故が集中していると推測される。

 山岳遭難者を年齢別で見ると、60~70代が多く、346人で全体の4割を占めている。高齢になると体力や筋力が低下し、 疲れたり転びやすくなったりする。

2023年夏期(7~8月)の山岳遭難データのまとめ
・山岳遭難者数:809人
・山岳遭難の発生場所:長野県や静岡県、富山県が多い
・年齢別山岳遭難数:60~70代が約4割以上を占める

▼警察庁 2023年夏期における山岳遭難の概況はこちらから
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r5_kaki_sangakusounan.pdf

■山岳遭難の原因は「道迷い」と「転倒」が多い

2023年夏期における態様別山岳遭難者構成比の推移 (出典:警察庁ウェブサイト 山岳遭難・水難|警察庁Webサイト https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/sounan.html)を加工して作成

 次に、山岳遭難が発生した原因について見てみよう。2023年夏期のデータから、山岳遭難の原因を割合の多い順に5つ挙げると、転倒・道迷い・病気・滑落・疲労というような順になる。とくに、転倒と道迷いは、どちらも全体の2割以上を占めている。夏期は富士山や日本アルプスなど、標高の高い山や人気の山に登る人が増える。そのため、転倒や疲労、高山病などの病気による遭難の割合が多いと考えられる。

■山岳遭難のデータから対策を考えよう

会津駒ヶ岳 滑りやすい木道に注意喚起の標識が設置してある

 山岳遭難は年々増えていることから、登山する際は油断せず、適切な準備をしてから山に入るようにしよう。特に、遭難事故が多発する富士山や日本アルプスの山々に登るときは、よりいっそう注意したいところだ。山の情報を集め、無理のない登山計画を立て、適切な登山装備を用意して登ろう。

 山岳遭難は転倒や道迷いによるものが多い。それらを未然に防ぐことが効果的な遭難対策になる。そこで、おすすめの方法は、実際の遭難事故例を書籍や動画で学ぶことだ。特に、ドキュメンタリー系のものだと遭難の怖さをリアルに想像できるので、真剣に考えるきっかけになるだろう。

▼安全登山は登山計画から! 遭難リスクを減らす登山計画の立て方
https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/123501

▼あわや遭難!? 道迷いから学んだ登山装備の大切さ
https://bravo-m.futabanet.jp/articles/-/123971

■山岳遭難の現状を把握して、登山を安全に楽しもう

会津駒ヶ岳の富士見林道から見る燧ヶ岳

 登山にはケガや遭難のリスクを伴うが、適切な対策を行っていれば、そのリスクを最小限に抑えることができるだろう。その第一歩として、山岳遭難のデータをもとに解説した。登山前に山について情報を調べたり、道迷いや転倒の対策を立てたりすることが安全登山につながる。登山における安全知識を学び、美しい自然の景色を見に行こう。