■五感をフルに活用して遊ぶのが「ブッシュクラフト」

枝の長さを調整して切り、トライポッドをつくる。今夜はこれに鍋を吊るして調理する予定だ

 川口さんの講習を通して、幼少期の記憶が呼び覚まされ、さらに腑に落ちた感じがしたのだそうだ。新しく気付いたことや、新鮮な感覚もたくさんあったし、忘れていた感覚や記憶も思い出されてきたという。きっとそれは忘れかけていた、本来の自分が求めていたことだったのだろう。

枝の分かれ目を上手く組み合わせて、トライポッドを作る。重力を上手く活かすのがポイントだ

「子どもの頃にしていた山遊びを、大人になってまたやってみて、追体験してるみたいな感じかな。東京に来て仕事をして、それなりに経験も積んでいろんな知識も付いたうえで、子どもの頃いた場所に戻ってみた、みたいなことなのかも」

白樺の皮に着火した火口をファイヤピットに入れ、小枝から順番に入れて焚き火を作ってゆく
きれいにメンテナンスされ並べられた調理用の道具と食材。ビールも大切なお供だ

 未央さんにとってのブッシュクラフトってどんなものですか? と聞いてみると、「自然に没頭できる山遊びだと思う。我を忘れてやってるし(笑)」との答えが返ってきた。

焚き火を操って作るチリコンカン。南米の煮込み料理だ

 今では、時には独りでも出掛け、気をつかうことのない人達と緩く集まり、焚き火を囲んでお酒を飲み、音楽談義をするのがなにより楽しいそうだ。

100年ほど前のニューヨークのスケート場で使われていたというオイルランタン

 今は将来に向けて、この素晴らしい遊びを子どもたちに向けて教える仕事にも興味が湧いている。

 「こうしてブッシュクラフトをやるようになって、この良さを人に伝えられたら良いな、と思うようになったんです。すごく面白いし、楽しいことなんだよっていうことを伝えたい」

翌朝の朝食。残ったチリコンカンを焚き火で炙ったバゲットに挟んで、コーヒーと一緒に。美味也

 そして今年から、「KIDS BUSHCRAFT ADVENTURE」という子ども達に向けたスクールで、インストラクターとしてブッシュクラフトの楽しさを伝える活動をしているそうだ。

 今後、子ども達に向けた講習のプログラムも予定しているという。

 北の大地育ちのおおらかさの中に、強い芯が通っている。そんな女性だと感じた。

陽が完全に暮れる間際の時間。鳥たちも鳴くのを止め、静寂に包まれる

※撮影に協力いただいた「ライジングフィールド軽井沢」には、ブッシュクラフト専用のサイトがあります。講習を受けることで、直火や薪の採取も可能です。

https://www.rising-field.com/