■辿り着いたのは、名人・川口拓さんの提唱するスタイル

ハンモックをかける時には、できるだけ樹にダメージを与えないようにタオルを一枚巻くようにしている

 「何人かでキャンプに行った時に、皆が自分のことは自分でやれるスキルがあると、すごく楽なんだってことに気付いてしまったんです。放って置いてくれるし、こっちも放っておいても気にならない。それぞれが没頭してずっとなにかやってるし、食べたい時に食べたいものを作って食べることができる。元々が大人数でワイワイやるっていうのが好きじゃなかったっていうのもあって、私にはこのスタイルが合ってるなって」

  突然知らない女性から連絡が来たおじさんたちは、さぞかし驚いたことだろう。快く受け入れてもらえて良かった。

切った枝にナイフで切れ込みを入れ、ペグに加工する。ナイフはノルウェーのHELLEを愛用している

 しばらくすると、もっと確かな知識と技術を学びたいと思った。

 「森や自然って、入って行くだけなら誰にでも簡単にできるんですけど、じつは遠くまで行くほど、元いた場所に戻るのにも知識とか技術が必要になったりする。食べられる植物かどうかとか、刃物の使い方とか、メンテンナンスのやり方だとか、自己流でも良いんですけど、もう一度ちゃんと学んでみたくなったんです」

ナイフで削って手作りした枝のペグを、アックス(手斧)の刃で叩いて地面に打ち込む

 再度ブッシュクラフトについて調べてみてたどり着いたのが、川口拓さんの著書『BUSHCRAFT MANUAL(誠文堂新光社刊)』と、彼の主催するJapan Bushcraft Schoolだった。すぐに申し込んで受講してみたそうだ。その行動力がすごい。

上に被せるタープ(屋根)を、パラコードを使い、トラッカーズヒッチで張る

 「子どもの頃にやっていたこととか学んだことを、もう一度ちゃんと確認したかったのかもしれないですね。川口さんの『五感をフルに使って自然を感じてみましょう』っていう、単なるHow toだけではない、心構えとか自然の捉え方とか考え方に共感できた、っていうのも大きかったです」

トライポッドとハンガーを作るための材料を森で採取する。手にしているのは組み立て式のノコギリ