登山には遭難やケガのリスクが伴う。そのリスクを回避するためには、適切な登山装備を用意したり、安全登山の知識を学んだりする必要がある。しかしながら、登山を経験してみないとわからない点も多いため、初心者がすべてを理解するのは難しいだろう。そこで登山を嗜み、アウトドアショップに勤務する筆者の経験を踏まえ、登山初心者がよくする勘違いを3つピックアップして解説する。

 自身にも当てはまるものがないか確認してみてほしい。登山を安全に楽しむために必要な知識を学ぼう。

■とりあえず登山靴だけあれば登山できる?

 登山において、必要になる装備は多く、すべてを一気にそろえようとするとお金がかかるだろう。現に、アウトドアショップに来るお客様のなかには、金銭面の理由から登山靴だけ買って登山を始めようとする人もいる。

 しかし、登山靴だけでは、登山におけるケガや遭難のリスクへの対策は不十分だ。ましてや、山に慣れていない初心者ほどケガや遭難のリスクが高い。そのため、登山初心者こそ登山装備を適切にそろえて山に登ってほしい。たとえば、日帰り登山の必須装備は以下の通りだ。

ウェア:レインウェア上下、行動着、アンダーウェア、ソックス、グローブ、帽子、防寒着
ギア:登山靴、バックパック、レインカバー、水筒またはリザーバー、ヘッドランプ
携行品:コンパス、地図とマップケース、タオル、時計、ゴミ袋
緊急用品:救急用品や常備薬、健康保険証と身分証明書、携行食と非常食、登山届、エマージェンシーシート、携帯電話、モバイルバッテリー、ホイッスル、補修用テープ、細引き、アウトドア保険
※モンベルの夏山登山装備ガイドを参考

 なかでも、重要だが後回しになりがちなものを3つ挙げる。

■レインウェア

 レインウェアは登山における三種の神器の一つであり、雨や霧などによる水濡れから体を守るために必要な装備だ。しかし「晴れた日にしか登らないから」という理由でレインウェアの必要性を軽視する人がいる。また、アウトドアショップでは「レインウェアはとりあえずジャケットだけでよい」といった考えのお客様をよく見かける。

 登山にレインウェアは必要ないという考えは危険だ。なぜならば、山の天候は変わりやすく、晴天の予報でも実際には雨が降ることがよくあるからだ。そして、体が濡れると体温を奪われてしまい、行動不能に陥るおそれがある。そのため、レインウェアは必ず携行しよう。また、レインジャケットだけで雨を防ぐことはできないので、上下セットでそろえたい。

■ヘッドランプ

 ヘッドランプは、暗い時間帯に行動するために必要なものである。日帰り登山でも必須装備なのだが、アウトドアショップに来店する方のなかには、その必要性を理解していない人もいる。「日帰りで、日が沈む前に下山するから」と言い、後回しにしてしまうのだ。

 しかし、これは「万が一の状況」を想定していないため危ない考えだ。もしも道に迷ったり、ケガをしたり、日没までに下山できなくなったらどうだろうか? 暗闇のなかでは歩けず、じっと朝を待つしかない。そんな事態を防ぐために、日帰り登山でもヘッドランプを携行する必要があるのだ。

■地図とコンパス

地図とコンパス(撮影:川村 亨)

 登山道には不明瞭な道が少なからずある。そのため、もし道に迷ってしまったとき、現在地や進路を確認するために地図とコンパスが必要だ。地図は地形が記されている縮尺2万5000分の1のものが好ましい。簡易マップは詳細な情報が得られないため好ましくない。

 コンパスは地図と組み合わせて使用するので、マップ用のコンパスを用意したい。もちろん、適切に使えるよう地図の読み方を学んでおく必要がある。

 近年はGPSの精度が上がってきているので「ヤマップ」や「ヤマレコ」といったGPSアプリを使うのもよいだろう。ただ、こうしたアプリは携帯電話のバッテリーが切れると使用できないので、モバイルバッテリーの携行を忘れないようにしたい。