■ひと安心も束の間、最後にピンチはやってきた

台風前の朝。小屋の後ろ焼津の方から黒い雲が来ています

 さてさて、始まってしまえば残すところモッコはひとつ。去年は荷上げが済むや否や、翌日からの入山に向けて4時間半も離れた芝沢ゲートに向かって車を走らせるというバタバタスケジュールだった。

 しかし、今年のわたしはひと味違うのです。今回はわたし、なんとヘリの最終便に乗ります。人生で初めてのヘリ入山。作業員さんを迎えに行く便に乗せてもらうことになったのだ。う〜、緊張する。営業開始まで5日間しかないし、できるだけ早く小屋に上がりたいのでありがたや。

 どうやら上も作業が無事に済んで、作業員さんも下山の準備ができている様子。余裕ぶっていたわたしも、だんだんと緊張してきた。さて、参りましょう。

初めてヘリコプターに搭乗!

 ヘリが出発したら、想像以上に速かった。下にいる皆さんが、一瞬で小さくなる。もうヘリに乗るなんて最初で最後かと思うと、瞬きすらも惜しい。下を眺めると、小さな集落が見えた。あの谷のさらに奥にも、誰かの暮らしがあるのか。そのさらに奥の山の上に私たちの暮らしがある。「いろんな生活があるな〜」なんてことを思っているうち、あっという間に山が近づいてきて、余韻に浸る間もなく突如小屋が現れた。

 あの小屋が見えた瞬間は忘れられない。大きな光岳に、とてもちっぽけな小屋だった。嵐の時も私たちの生活と登山者の安全を守ってくれるのだから、愛おしい。せめて、いつも綺麗にしますからね。

■初めてヘリに乗った余韻…… は吹き飛んでしまった

荷物を吊り上げる様子

 ヘリポートに降りると、下山するはずの皆さんの姿がない。ヘリの整備士さんは「どうなっているんだ?」と言うけど、わたしもなにがなんだかわからないでパニック。遠く小屋の方で、悠長に手を振っている人たちが見えた。まさか!?

 ヘリは燃料の関係もあるのか、サアーと下ってしまった。電波もなく連絡もできない。急いで小屋まで行くと、手を振っていたのは居残り組の人たちだとわかったが、下りる方々はどこへ? 

 振り返ると、ハイマツを漕いでいる人たちの姿が見えた。どうやら、ヘリポートに向かっているうちに、迷子になってしまったみたい……。結局、再度迎えにきてくれたヘリに乗って帰ることができてひと安心です。

 今日はすべてが順調に進んでいたのだけれど、最後の最後にピンチは突然やってきた。初めてヘリに乗った余韻を楽しむ間もなかった1日でした。