2023年8月、筆者は友人と3人で1泊2日の白馬三山縦走を計画した。筆者を含めて女性2名と男性1名、日頃からよく登山にでかける見知った仲である。猿倉登山口より大雪渓を抜けて、1日目に白馬岳(標高2,932m)に登り、白馬岳頂上宿舎(標高約2,730m)に宿泊。翌日、杓子岳(しゃくしだけ)、鑓ヶ岳(やりがたけ)、白馬鑓温泉(はくばやりおんせん)を経由して、猿倉に下山する周回ルートである。

 初日、白馬岳頂上宿舎で休んでいたとき、女性の友人の体調が急変した。高山病を発症したのである。高所では常に高山病のリスクがあるということを知ってもらうため、友人の体調がどのように悪化していったかを交えながら今回の山行をリポートしたい。

■数えきれないほどの落石が転がっている、白馬大雪渓を登る

白馬大雪渓上部の花畑

 白馬大雪渓は針ノ木雪渓(はりのきせっけい)、劔沢雪渓(つるぎさわせっけい)と並ぶ日本三大雪渓の一つである。雪渓とは夏になっても雪が残っている山岳地帯の谷地形のこと。

白馬大雪渓の上部から冷気が吹き下ろしてくる

 猿倉荘登山口(標高1,230m)より白馬岳山頂(標高2,932m)までの累積標高差は約1,700mあり、そのルート途中に白馬大雪渓がある。登山口からしばらくは猛暑の登山道であったが、大雪渓まで来ると雪渓上を吹き下ろす冷気のおかげで暑さが途端に和らいだ。

白馬大雪渓上の落石

 しかし、気を許すわけにはいかない。ここからは終始落石のリスクと向き合って登らなければならないのだ。雪渓上の落石は音がないので、常に周囲を観察し、雪渓上に赤くマーキングされたルートをたどりながら登る。