■「ニカ」と呼ばれる多良間島の猫

 多良間島の名物は「多良間ブルー」と称される美しい海と、国の重要無形文化財に指定されている「八月踊り」、そして、島の言葉で「ピンダアース」と呼ばれる闘ヤギ大会だ。

 沖縄のヤギにはのんびりとしたイメージがあるが、多良間の雄ヤギは、ねじれた角と巨体を激しくぶつけ合って闘う逞しいヤギだ。

 多良間の雄ネコもまた、小さな集落の中で熾烈な縄張り争いを繰り広げる闘うネコたちであった。

上品な佇まいの母猫。優しい視線を向けてきた
木陰に隠れて縁側で子育て中。母も必死です
シーサーに守られた屋敷の奥に、島猫一家がいた

 多良間島を最初に訪れた5月はちょうど出産ラッシュだったようで、子育て中の母子をあちこちで見かけた。

 そして次に7月に訪れた時には、その子どもたちもずいぶん大きくなって、雄ネコたちの新たな縄張り争いが始まっていた。

 多良間島では、猫を「ニカ」と呼ぶそうだ。

 そして島に伝わる民話には、ニカが登場するものがとても多い。

 島の美しい自然と共にある、島の人たちの暮らし。そして、そこに寄り添って生きる島猫たち。

 暑い暑い夏が過ぎて秋になる頃、また、この島の猫たちに会いに行きたいと思った。

 

文/シマネコキネマ 写真/仲程長治