「富士山は登る山ではない、見る山だ」と言われるが、登山を趣味にしている人であれば、やはり一度は日本最高峰の頂きに立ちたいと思うのではないだろうか。

 筆者も同じ考えだが、人混みに紛れて登るのは少々しんどい。そこで「なるべく登山者の少ないコース」と考えたときに思い浮かんだのが、御殿場ルートだ。

 多少体力に自信がある登山歴9年の筆者が、吉田ルート、富士宮ルート、御殿場ルート、須走ルートとある富士4ルートの中で、最も難易度の高い御殿場ルートで挑んだ富士山登頂チャレンジをレポートする。

■富士山最難関ルート「御殿場ルート」とは

雲の上の登山道、御殿場ルートの下に広がる雲海(撮影:兎山 花)

 御殿場ルートは富士山の南東、静岡県御殿場市から富士山頂まで登るルート。富士4ルートの中でも、登山口から山頂までの累積標高差が約2,300mと最も高く、往復距離も約17.5kmと長い。

 7合目まで足元はほとんど砂地で、滑落するような場所はないが、1泊2日で行く場合でも、2日間で少なくとも8時間以上登り続けられる体力が必要となる。特に1日目は山小屋まで、5時間以上の登りが続くので覚悟しよう。

 また見晴らしがよい分、7合目までは日光や雨風をさえぎるものが何もないので、天候の影響を受けてしまう。天候は急変するので、暑さ、寒さ、雨、全てに備えた装備で挑まなければならない。

 ここまで聞くと、最難関で過酷なルートというイメージだが、御殿場ルートには富士山頂を眺めながら大きな砂の山を歩くといった、ルート自体を楽しめる要素が詰まっている。

■登山口から15分で現れる御殿場ルートの全貌

 登山口から15分ほど樹林帯の中を歩くと最初の山小屋、大石茶屋に着く。そこから一気に視界が開け、目の前にグレーの砂景色が広がり、遠く前方に富士山頂が見える。

 条件がそろえば眼下に雲海が発生すると聞いていたが、まさにこの日、足元に一面の雲海が広がり、振り返るたびに、自分が雲の上にいることを実感した。

 視界が広く、道のりを目視できるのもうれしい。富士山頂が遠く前方に見え、頑張った分だけ山頂が近くなるのは大きな励みとなった。

※所要時間に休憩含まず。所要時間や標高差、距離はおおよその値 

■御殿場ルートのオアシス「半蔵坊」

 5合目登山口(標高1,440m)から約1,150mほど標高を上げた新6合目(標高2,590m)にある砂漠のオアシスが「半蔵坊(はんぞうぼう)」だ。

 登山口近くの大石茶屋から御殿場ルート7合目(標高3,040m)までの間で唯一営業している山小屋で、ここでようやくトイレが利用できる。7合目の山小屋まで先は長いので、飲料が足りない場合はここでペットボトルを購入しておこう。

 外のベンチに座ると景色が一望でき、ここで温かいうどんを食べてエネルギーチャージするのもおすすめだ。ルート上には人生訓が掲げられ、登山者を励ましてくれる。

半蔵坊が御殿場ルート上に設置している徳川家康の人生訓(撮影:兎山 花)

 気になったのが半蔵坊スイーツ「おとなのアイス  こどものアイス」。

御殿場ルート上に設置されている半蔵坊スイーツの看板(撮影:兎山 花)

 残念ながら食べるチャンスはなかったが、どんなアイスなのか気になったので、あとで調べてみた。トッピングにご主人こだわりの味付けがあり、こども用には、はちみつ、おとな用にはもち米とこうじを発酵させた秘密のトッピングがあるようだ。

 さらにフォトジェニックな山のかたちを意識した、味だけでなく目でも楽しませてくれるバニラアイスになっている。

●富士山御殿場口 新6合目山小屋 半蔵坊

電話:090-2745-2590(予約専用)

営業日時はホームページよりご確認ください
http://hanzobo.main.jp/index.html