群馬県最北に位置するみなかみ町は日本百名山のひとつに数えられる谷川岳をはじめ、多数の山々に囲まれた自然あふれる町。首都圏3,000万人の命の水ともなる利根川の、水源となる大水上山(おおみなかみやま)があるのもこの町だ。上信越高原国立公園に属し、自然を守りながら人々が暮らしを営む環境が「世界のモデルである」とユネスコから評価され、ユネスコ生物圏保存地域「ユネスコエコパーク」に登録されている。そんなみなかみ町で体験できる自然とはどんなものなのか。そのすばらしさについて紹介していきたい。

■高山植物と大パノラマの絶景に出合える谷川岳

ロープウェイ山頂に広がる夏のスキー場の様子。奥に見える2つのピークが谷川岳

 日本百名山に名を連ね、登山者に人気の谷川岳は、トマの耳とオキの耳の2つのピークから成る双耳峰。中央分水嶺に位置し、冬期はシベリアからの湿った冷たい気候をもろに受けることから、山全体が深い雪に包まれる「豪雪の山」として知られている。こういった環境から、標高2,000mに満たない山でありながら3,000m級の山々の植生や地形が見られることが特徴だ。

 登山の玄関口となるのが谷川岳ロープウェイ。このロープウェイとリフトを乗り継げば標高1,500mの天神峠まで楽々と上がれ、そこから天神尾根を通って谷川岳へとアプローチできる。登山をはじめたての人でも少ない高低差で山頂を目指せるうれしい環境だ。しっかり登って山を味わいたいというのであれば、日本三大急登と呼ばれる西黒尾根コースがある。こちらは難易度の高いコースなので中級者から上級者向けとなる。

 谷川岳ロープウェイまでのアクセスは上越新幹線の上毛高原駅の利用が便利。バスをうまく乗り継げば、東京駅から2時間ほどの移動で谷川岳に登りはじめることも可能だ。

みなかみパーフェクトガイド

 

■ロープウェイ山頂を散策するだけでも十分楽しい

ロープウェイは2本のロープで搬器を吊るすフニテル式。山を見下ろす風景もすばらしい

 ロープウェイ山頂エリアは、冬季はスキー場が営業しているが、雪解けとともにさまざまな高山植物が咲きはじめ、夏は広々とした草原に、そして秋は紅葉が楽しめる散策にぴったりなところだ。5月下旬にミズバショウが姿を現わし、5月上旬からはカタクリの群生、夏はニッコウキスゲが見頃になり、10月初旬から11月初旬にかけては紅葉で山が錦色に包まれる。観光用ペアリフトを利用して、ゲレンデをめぐりながら四季折々の自然を感じることができる。

 リフトを上がった場所にある展望台は谷川岳を一望できる人気のビューポイント。パノラマの絶景が広がり、日光白根山や至仏山、赤城山のほか、運がよければ富士山まで見られることも。また、ロープウェイ山頂駅と直結する展望レストラン「ビューテラスてんじん」では、窓の向こうに谷川連峰を眺めることができる。食事をしながら絶景を楽しめるおすすめのスポットだ。

谷川岳ロープウェイ 営業案内

 

■一ノ倉沢の絶壁もぜひ見に行きたい

林道を進んだ先に現われるダイナミックな一ノ倉沢の大岩壁

 谷川岳は日本屈指の岩場として名高く、その特殊な地勢と気象によって3,000m級の山が連なる日本アルプスに匹敵するようなダイナミックな景観を誇る。谷川岳の東麓に位置する谷川岳一ノ倉沢には日本三大岩場のひとつと言われる大岩壁があり、ロッククライミングの聖地として知れ渡る。絶壁には夏でも雪が解けずに残っていることがあり、谷川岳の雪深さを物語っている。

 この一ノ倉沢は見るだけでも迫力満点。谷川岳ロープウェイ山麓駅でもある「谷川岳ベースプラザ」からブナ林に囲まれた道を3kmほど歩くと、山裾に絶壁がそびえる荘厳なる景色に出合うことができる。舗装された歩きやすい道を進むのでスニーカーでも行け、登山装備もほぼ必要なく、飲料水さえ持っていけば十分なほど。自然が生み出すダイナミックな景観は一見の価値ありだ。

日本三大岩場「谷川岳 一ノ倉沢」