雨の日に、あえて登山をしたくはないものだ。けれども山の天気は変わりやすいので、途中で雨が降ってきたということはよくある。また、予約していた登山ツアーは、少々の雨なら決行だ。天候の急変は予想が難しく、レインウェアを着て登らなければならない場合もある。

 レインウェアを着ると蒸れて、中の服がびしょぬれになることがある。しかし、そんなレインウェアで山に登っていたら、体が冷えて低体温症を引き起こすことにもなってしまう。

 初心者が山道具を揃える際は、レインウェアこそしっかり選びたいアイテムナンバーワンなのだ。

■レインウェア選びで大切な「防水性能」

一日中雨だった霧ヶ峰。雨でも明るく歩きやすかった(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

 レインウェアは、アウトドア専門店以外でも、衣料品店、雑貨店、100均など様々な店舗で扱っているが、レインウェアなら何でもいいというわけではない。最初の1枚としてはオールマイティーに使用できる上下セパレートタイプの「登山用レインウェア」を選ぼう。

 登山用のレインウェアは、生地の防水性能が高いだけでなく、縫い目の裏にシームテープが貼ってあり、ファスナーからも雨水がしみこまないようにつくられている。また、着用した時に隙間から雨水が侵入するのを防ぐために、フードや袖口などを体にフィットさせることができるように作られている。

 生地の防水性能は「耐水圧」という数値で表される。登山用としては20,000mm以上の製品を選ぼう。

■レインウェア選びで重要な「透湿性」

雨が止んだのでレインウェアは必要ないのだが、防水透湿性素材を用いたレインウェアは着ていて蒸れず快適なので、アウター代わりにそのまま着用し続けた(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

 レインウェアを着ているのに、中の服がびしょぬれになることがあるのは、雨がしみこんでいる場合よりも、自分の汗でぬれている場合がほとんどだ。レインウェアの内側は、汗が水蒸気となって蒸れているのである。

 蒸れを防ぐために開発されたのが「防水透湿性素材」を使用したレインウェアだ。内側からの水蒸気はウェアの外に出すが、外からの雨はウェアの中に入れないという性質を持っている。

 ゴアテックスが有名だが、最近はいろいろなメーカーから防水透湿性素材を使用したレインウェアが発売されている。ゴアテックスの上下だと値が張るが、もっとお手頃な価格のレインウェアも売られているので、選択肢が広がった。

 ただし、「防水透湿性」といっても、性能は様々だ。激しい運動をする場合は、透湿性が10,000g/m2・24hrs以上が適しているといわれている。ゴアテックスの防水透湿性素材は耐水圧が50,000mm以上、透湿性は25,000~98,000 g/m2・24hrsと高性能なので、多くの登山者から支持されている。耐水圧が20,000mm、透湿性が10,000g/m2・24hrs程度のレインウェアならば、比較的求めやすい価格で購入できる。

 とはいえ、耐水圧や透湿性を公表していないメーカーも多い。登山用品の専門店で、スタッフに相談して購入することをおすすめする。

■レインウェアの中に着るものも大切

 レインウェアの中がびしょぬれにならないためには、さらに重要なことがある。レインウェアの中に綿・コットンの服を着てはいけないということだ。

 防水透湿性素材を用いたレインウェアを着ていても、登山中には汗をかく。汗の量が多ければ、透湿性能が追い付かない。レインウェアの中の衣服は「速乾性」のあるものを着て、レインウェアの透湿性能が機能しやすくする必要がある。

 予算が許せば、ファイントラックのドライレイヤーやミレーのドライナミック、夏用の薄手のメリノウールのシャツなどを素肌に着ることで汗冷えを防ぐことができる。その上に着るウェアも速乾性のものにしよう。

 手持ちのもので済ませたいならば、ポリエステルなどの速乾性のあるウェアにしよう。下着も、下着以外のシャツ類も、「中に着るものは綿・コットン以外」を選ぶということが重要だ。

 綿・コットンのシャツは汗や雨でぬれるとなかなか乾かないので体を冷やしてしまい、登山には向かない。