30〜40代頃から、山歩きで膝が痛くなる人は多い。年齢とともに体重が増え、筋力も衰えてくるので、仕方のないことではある。ただ膝痛のために運動不足に陥ると、さらに体重が増加し筋力も衰え、悪循環に陥ってしまう。そこで今回は筆者の体験談もふまえ、膝痛に悩む中年小太りハイカー必見の、膝痛軽減に効果的なトレッキングポールの2本使いを紹介する。

■トレッキングポールは、なぜ1本ではなく2本使い?

 トレッキングポールは1本のものと2本セットのものがある。どちらもメリット・デメリットがあるが、筆者がすすめるのは、2本セットだ。

 なぜなら人類の祖先は4足歩行していたから。トレッキングポールを両手に持つことで、疑似的に、先祖返りするのである。

 山歩きでの足場は悪い。すると転倒しないよう体のバランスをとるため、無意識下で脳のタスクが増えてしまう。これは、パソコンやスマートフォンのバックグラウンド処理が増えている状態に似ている。この状態に陥ると、パソコンやスマートフォンは、バッテリーを激しく消耗していく。人の場合は、バッテリーの代わりに体力を消耗するのではないか。

 ところがトレッキングポールを両手に持つことで、疑似的4足歩行になり、体は安定し、脳疲労が軽減されるのだ。また、擬似的前足のトレッキングポールに体重の一部がかかることや、両手も動かす全身運動になることから、膝の負担が軽減され、膝痛が起こりにくくなるのである。

 ただ、もちろんトレッキングポール2本使いにデメリットがないわけではない。両手がふさがるので、写真撮影したいときには邪魔になる。場所によっては、トレッキングポールにわずらわされて歩きにくい。何よりかさばる荷物が増えてしまう。

 それでも、山で膝が痛くなって動けなくなることを考えると、トレッキングポールは必須アイテムだと思うのである。

■トレッキングポールを使い始めたきっかけ

 筆者がトレッキングポールを使い始めたきっかけは“膝痛”である。

 筆者は学生時代、ワンダーフォーゲル部に所属しており、日頃からよく山に登っていたのだが、20代後半から30代前半にかけ、体重が一気に増加してしまった。

 それが原因で、登山中に膝痛が発生。知識として知っていたトレッキングポール2本使いを思い出し、その辺に落ちていた木の枝で2本使いをしたのが始まりである。

 筆者が膝痛で動けなくなったとき、同行していた仲間は、筆者を担いで下山することを覚悟したそうだ。しかしその辺に落ちていた木の枝でも、2本使うと驚くほど効果があり、何とか自力で下山できたのである。

筆者私物のトレッキングポール(撮影:野口宣存)