4月から5月にかけて東北の山々は一気に山開きを迎える。筆者が今回、目をつけたのは霊山(りょうぜん)という、福島県伊達市と相馬市の境に位置する山だ。散在する奇岩や、大展望が見られる景勝地が魅力である。2023年度における霊山の山開きは5月3~6日。このイベントでは、記念バッジが配布されたり、登山口前で物産展が開かれたりする。
山の魅力や山開きの催しなどに惹かれ、筆者は霊山に登ることにした。以下では、その様子をレポートする。見どころ満載の山旅になったので、ぜひご覧いただきたい。
■霊山:ファミリーコース
今回の登山で歩いたのは、初心者でも登りやすい「ファミリーコース」。このコースは「霊山こどもの村」の上にある登山口から、奇岩をめぐるルートだ。登山口の標高は530mで、最高点の東物見岩(ひがしものみいわ)までは標高差約300m。登山道はよく整備されているが、奇岩を歩く一部区間には、鎖場やハシゴなどがある。難所とまではいかないが、足場が悪いところは慎重に歩く必要がある。
●霊山
場所:福島県伊達市と相馬市の境に位置する
標高:825m
公式サイトガイドマップ:霊山県立自然公園登山マップ
■【霊山】山開きレポート
登山日は5月5日。車を走らせ登山口へ着くと、目指す霊山の山容がすでに顔を出している。切り立った崖や巨岩が印象的だ。時刻は午前9時過ぎ、駐車場はほぼ埋まっている状態。登山口前にて登山マップや記念バッジをもらい、登山道へ足を踏み出す。
林道を歩いていくと急勾配の階段道が現れ、しょっぱなから息が上がる。しかし、周りを見渡すと新緑がまぶしく、自然の美しさに不思議と元気が湧いてくる。登山口から20分ほど歩くと、「宝寿台(ほうじゅだい)」と呼ばれる景勝地に着く。巨岩に架けられたハシゴを登ると、そこには絶景が広がっていた。宝寿台からは阿武隈山系や吾妻連峰、安達太良山などの山並みが一望できる。5月はまだ山頂部に雪が残っており、新緑と積雪のコントラストが美しい。
宝寿台から5分ほど歩くと、「見下し岩(みおろしいわ)」に着く。名前の通りに岩から見下ろすと、霊山こどもの村や登山口にある駐車場など眼下に展望が開ける。
見下し岩からさらに進むと、登山道に巨岩がせり出している場所に出る。ここは「親不知子不知(おやしらずこしらず)」と呼ばれており「親は子を、子は親を考える余裕もないほどの難所」という意味のようだ。登山道には手すりがあるので、支えにしながらゆっくりと進む。
親不知子不知を抜けると、「護摩壇(ごまだん)」と呼ばれるところに出る。岩の中腹がえぐられたような形をしており、なんともユニークだ。山頂に近くなると、霊山城跡や国司館(こくしかん)跡、石碑など歴史を感じられるものが見られる。建物は、戦争で焼失しているため、現在は広場になっている。
登山口から歩いて約1時間30分、霊山の最高点である「東物見岩」へ着く。展望が開けており、近くには麓の集落、遠くには鹿狼山(かろうさん)や蔵王連峰が望める。東物見岩で展望を楽しんだ後は、弁天岩や日暮岩などの奇岩を経由して、登山口へ戻った。