山を買って自分専用のキャンプ場をつくる。そんな夢を抱いているキャンパーも多いのでは。雑草を除き、木々を伐採し、テントを張りやすいように土地を整えていく。「生活に必要な水は?」「トイレはどうやって作る?」など、課題が山のようにあり、考えただけで気が遠くなる。

 しかし、実際にそんな山積みの課題を解決し、みかん畑だった場所にキャンプ場をつくってしまった人がいる。神奈川県在住の小川美奈子さんだ。今回は小川さんに「キャンプ場の作り方」について話を伺った。

■みかん畑が30年でヒノキ林へ

元はみかん畑だったとは思えないヒノキの木立(撮影:ヒラマツアユコ)

 箱根湯本駅から車で約10分。小川さんのキャンプ場は林業関係者や水道局関係者が時々立ち寄るくらいで、一般の人は立ち入ることのない山の中にある。「リオレの森」と名付けられたそのキャンプ場は、基本的に小川さんの知り合いのみが利用できる「プライベート・キャンプ場」となっている。

 代々およそ3000坪という広さのみかん畑を営んできた小川さん家族。しかし近年、徐々にみかんの価値が下がり、後継者もいないことからみかん畑の継続が難しい状況に。

 「今から30年以上前の話になりますが、自治体による緑化政策でヒノキを植樹することで補助金が出る時期があったんです。それを利用してヒノキを植樹することにしました」(小川さん)

 小川さんの父親がヒノキの植樹をスタートさせ、30年余りでみかん畑をヒノキ林に様変わりさせた。「みかん畑をキャンプ場にした」と表現したが、正確には「みかん畑からヒノキ木立になり、そこをキャンプ場として整地した」というのが正しい。

 小川さんの父親が14年前に他界してからは、母親がひとりで山の作業をしていたが、4年前に自動車免許を返納。これがターニングポイントとなり、小川さんは改めて実家の状況を見つめ直すことになった。