■湖の底深くに暮らす美しい妖精の伝説
湖の周囲には森林散策ができる遊歩道があることがわかり、早速湖畔へ降りてみることにした。湖面越しに周囲を眺めると、このエリアを襲った猛烈な暴風雨の被害の後がまだあちこちに見られた。
偶然居合わせた森林警備隊員の話では、この湖畔の森林には樹齢250年を超える木がたくさんあったそうだが、残念ながら暴風雨によってその多くは倒れてしまったそうだ。こんなに大きく丈夫そうな木々を一瞬でなぎ倒すとは相当な威力だったに違いない。倒木を切り分けるチェーンソーの音が絶え間なく響く中、30分ほど湖畔を散歩する。
帰り道にふと湖面を見ると、小さな銅像が湖の端にちょこんと立っているのに気づいた。湖水の量が少なかったから見えたものの、きっと夏場は湖の底に沈んでいるに違いない。この銅像はいったいなんなのだろう?
その答えは湖畔に立てれらた説明書きの看板が教えてくれた。これはカレッツァ湖の妖精の銅像で、妖精にまつわる伝説も残っている。
その昔、湖の底深くに暮らす美しい妖精に恋をしたラテマール山の魔法使いがいた。魔法使いは何度も彼女をさらおうと試みるが、妖精はなかなか湖面に姿を現さない。そこで魔法使いは彼女をおびき出そうと、カレッツァ湖からラテマール山に向けて大きな美しいな虹をかけた。妖精は美しい虹を一目見ようと湖面に姿を表すが、魔法使いが捕まえようとすると再び湖の奥深くへ逃げてしまった。怒り狂った魔法使いは虹を掴むと粉々に砕いて湖の中に投げ込んだ。それ以来、湖水は虹の中のアイリスの色になったという。
なんともロマンティックな伝説だが、周囲の美しい風景を眺めているとそれも納得できる気がしてくる。ちなみに妖精の銅像は水量が非常に少ない時にしか見られず、一年を通してもその姿が見られるのは稀だそうだ。私はしっかり妖精の姿を拝めてラッキーだった。
湖畔の散歩を終えたあとは、バスターミナル横のバールでクラフトビールとソーセージのランチを味わい、帰路のバスが来るまでの間にお土産ショッピングも楽しんだ。たった半日とは思えないほど充実した時間を過ごすことができた。