■土柱群の奇観「大地のピラミッド」へ!
アスファルトの道路に沿って建ち並ぶコッラルボの住宅街を抜けると、大地のピラミッド遊歩道の入り口が見えた。ここからは自然道になっている。深い渓谷を挟んで、向かいに雄大なドロミティ山塊のパノラマを眺めながら、切り立った崖の上のハイキングコースを歩く。
途中、のんびりと草を食む山羊の群れに出会い、まだぴょんぴょん跳ねている愛らしい仔山羊たちに草を食べさせてあげた。いつしか小雨も止み、雲の切れ間からキラキラと陽光が降り注いできた。ポンチョを脱いで洗い立てのような涼しい空気を肌で楽しみながら歩くこと20分。目の前に巨大な土柱の群れが現れた。なんとも不思議な、そして息を呑むような絶景に目が釘受けになる。
展望台の説明書きによると、大地のピラミッドことレノンの土柱群はなんと2万5千年前に自然の侵食によってできたものであるらしい。氷河期の終わりに、後退していく氷河が谷を削りながら流れ、その作用で削り取られた岩石や土砂が堆積してこのような奇妙な地形になったという。
ギザギザに尖った土柱のてっぺんには、まるで人為的に置かれたような岩が帽子のように乗っかっているが、これも全て自然の為せる技。しかもこの岩の帽子のおかげで土柱は風雨の侵食から守られているそうで、この帽子がなくなってしまうと土柱そのものが一気に削られてしまうらしい。気の遠くなるような時間と大自然が持つ驚異的なパワーに思いを馳せるにつけ、私たちが今こうして2万5千年前の大自然の奇観を目の当たりにできるのは奇跡だと思えてくる。
大自然の奇観を心ゆくまで眺めた後は、コースの終点マリア・サールの村まで足を延ばしてランチタイム休憩。まだ本格的なヴァカンス・シーズンではないものの、営業している山小屋のレストランが一軒あったので迷わず入っていった。
店内には先のハイキングコースですれ違ったドイツ人のお年寄りグループが、早くもビールを片手に盛り上がっている。シンプルなチロルの郷土料理が並ぶメニューから、お腹に優しそうなコンソメスープのカネーデルリを選び、デザートに温かいラズベリーソースをかけたジェラートを頼んだ。目の前に広がるドロミーティの大パノラマを楽しみながら、ほっとするような素朴なランチを満喫して帰路に着いた。