新型コロナの世界的な蔓延から3年が経ち、行動制限が緩和されたこともあり、登山者の行動も活発になっている。

 今年こそは残雪の雪山登山に挑戦してみようと考えている人もいることだろう。しかし、残雪期登山は、服選びはもちろん、足元の装備が肝要になってくることはご存じだろうか。

雪が残った登山道(撮影:彩)

 筆者は残雪期の登山時で「その装備では山頂までは行けないだろう」という登山者に遭遇したことがある。今回はそのときの経験から考察する、登山に適した装備、残雪の雪山登山の注意点、事前の情報収集法について紹介する。

■驚きの登山者との遭遇

 以前、3月末に残雪雪山登山に行ったときの話。その山は、軽アイゼンで登頂可能であったが、慎重な足運びが必要な道もあり、装備をひとつ間違えると登頂できないと感じていた。

 下山途中、登り始めたばかりのグループに出会った。すれ違いざまに筆者の装備を見て「今日はアイゼンは必要ですか?」と話しかけてきたのだ。どうやらそのグループは、そういったアイゼンの類のものは持ってきていないようであった。

 登山者の足元を見てみると、女の子はスニーカー。ペットのわんちゃんを一緒に連れてきており、微笑ましい光景だが、女の子は近所へ散歩に行くような服装だ。みんなで山頂を目指しているようだが、その装備ではとても山頂へは辿り着けない。

 そのグループには「この先の道を山頂側に進むとすぐに、残雪がかなり残っている道があるので、軽アイゼンもしくはチェーンスパイクは必須ですよ。道の右側はかなり急な斜面になっているので、足を踏み外すと滑落の危険性もあります。私自身も軽アイゼンを付けて歩きましたが、かなり怖い道だなと感じました。実際にその道を見てみたらわかると思います。」と忠告した。

 その後ろには連れのカップルが続いて歩いていた。男性を見ると、出発から間もない地点であるのだがすでに汗だく。その様子では汗で濡れた服が乾ききらず、休憩時には寒くなってしまうだろう。

■残雪期の登山をするには、登山靴は必須

 そもそも、登山に使用する登山靴は、ソールの素材やソールパターン(ソールの形状、凹凸具合)が特殊で滑りにくい。また、靴底に入っているシャンク(硬いプレート)が地面からの衝撃を吸収し、長時間の歩行でも足裏が痛くなりにくいのが特徴だ。

 ミドルカットやハイカットの登山靴は、足首の捻挫を防止するだけでなく足の筋肉もサポートするため、足全体の疲労が溜まりにくいのでおすすめだ。

 残雪の雪山登山を計画しているのであれば、登山靴には後述するアイゼンとの相性もあるということを覚えていてほしい。そもそもアイゼンを装着できない登山靴もあるため、注意が必要だ。

スニーカーのアウトソール。凹凸が少なく、いかにもに滑りやすそうだ(撮影:彩)
凹凸が深く、クッション性が高い登山靴のアウトソール(撮影:彩)