世の中には、眺望が悪い山にわざわざ登りに行く人がいる。

 山の眺望は、山登り最大の楽しみだ。それゆえ、眺望が悪い山に登る人は、ストイックなイメージもあるし、素人では計り知れない境地に達したベテランのようなイメージもある。

 しかしながら、実際のところ、何が楽しくて眺望が悪い山に登るのだろうか。

 そんな疑問を解決すべく、兵庫県宝塚市にある、眺望が悪いのになぜか人気の猪ノ倉山(いのくらやま・389.2m)へ向かった。

■猪ノ倉山トレッキングコース

猪ノ倉山周辺の簡単な地図(画:野口宣存)
猪ノ倉山西登山口(撮影:野口宣存)

 猪ノ倉山にはトレッキングコースが整備されている。登山口は西と東の2つがあり、300mちょっとしか離れていない。今回は西登山口から入り、東登山口に抜けるルートを進むことにした。

猪ノ倉山トレッキングコースから見える眺望(撮影:野口宣存)

 登山道は地図で見る限り、標高350mあたりまで一気に急な坂を登る道だ。林の中の道を黙々と登っていく。登山口の標高が220mくらいなので、標高差は約130m。寒波の後だったので、道にはところどころに雪が残っている。標高350m近くなってくると、木々の間から遠くの山々の景色が何度か垣間見えた。これが、猪ノ倉山の唯一の眺望だった。

猪ノ倉山は眺望が悪いので自然とイノシシの足跡などに目が行ってしまう(撮影:野口宣存)

 標高350mを超えるとゆるい坂の尾根道に入り、すぐにトレッキングコースの山頂広場的な場所に至る。ここにはもちろん眺望はない。

猪ノ倉山トレッキングコース頂上広場。この日は晴れと雪を繰り返す天気だった(撮影:野口宣存)
猪ノ倉山トレッキングコースから山頂に向かう分岐(撮影:野口宣存)

 広場から100mほど進むと、猪ノ倉山山頂に向かう分岐が現れる。ただ分岐とはいえ、目印のテープがあるだけ。おすすめは、分岐へ進まずそのまままっすぐ東の登山口に抜けることだ。