白猫はこちらの存在に気がつくと、さっと福木並木に身を隠した。が、隠れながらもじっとこちらの様子を伺っている。いつも思うのだが、島猫は、暮らすその島(シマ)の人間たちととてもよく似ている。恥ずかしがりやでちょっぴり臆病で、でも自信たっぷりに生きている島猫たちの姿を見て、この島における「人と猫との距離感」が少しわかってきた。
なんてことを考えながら歩いていると、突然、背の高い福木に囲まれた屋敷内から甲高い子猫の鳴き声が聞こえてきた。下校途中の子どもたちも、「どこにいるの~?」と探している。声を頼りに近寄っていくと、小さなトラ猫が福木の根元から庭先に飛び出してきた。あまりの可愛らしさに手を差し出すと、一人前にシャー! と威嚇してくる。
捨て猫だろうか? と思った直後、子猫の鳴き声を聞きつけて、1匹のミケ猫が慌てた様子でやってきた。そしておもむろに子猫の匂いを嗅ぐと、ぷいと去っていた。あれ? 迎えにきたんじゃないの? と思ったのも束の間、今度はオス猫とメス猫が2匹でやってきた。駆け寄る子猫、そして体を寄せ合い舐め合って、再会を喜ぶ3匹。母猫と子猫はしばらく庭先で遊んでいたが、やがて父猫が子猫の首根っこをくわえて仲良く帰っていった。
ニンゲン界をにぎわせている育児放棄や幼児虐待のニュースとは、まさに正反対。島猫を見れば、その島のルールや暮らしぶりがわかる。この島は、幼い子どもが声を上げれば、父母でなくとも様子を見に来る大人がいて、夫婦揃ってお迎えにくるのだ。なんと、いい島なのだろう。