年末が近づくと、初詣はどこに参拝しようかと考える人も多いのではないだろうか。全国各地に著名な寺社が存在するが、都市圏の寺社は毎年多くの参拝客を迎え入れる。
千葉県成田市にある「成田山新勝寺」もその一つで、初詣の参拝客数は屈指の規模を誇っている。今回は成田山新勝寺が人気を集める秘密に迫りつつ、境内の魅力をお伝えしていく。
■なぜ成田「山」なのか?
疑問に思う人もいるだろうが、なぜ成田「山」なのかだ。成田山新勝寺は単に「成田山」と呼ばれることが多く、「成田に山があるのか」と思ってしまう人もいるのではないだろうか。
実は寺院における「山」とは、寺院の称号である山号のこと。元々寺が修行の地として、俗世から隔絶された山の中に建てられていたことに由来する。時代が進み、山から離れた平地に建立された寺においても修行場としての意味を与えるために、山号を付けるようになった。成田山もその一つだ。
■成田山の人気のルーツ
成田山の人気のルーツは江戸時代にまで遡る。それは歌舞伎の名門、市川家とのつながりにある。成田市を出身地に持つ初代市川團十郎は、子宝に恵まれていなかった。跡継ぎを欲していた團十郎は、成田山の薬師堂にて祈願し、無事に後の2代目團十郎となる息子を授かった。
團十郎はこのことに大きく感謝を表し、成田山の不動明王を演じる歌舞伎を上演した。この演目が大当たりし、市川家が「成田屋」を屋号として使い始めたことで、江戸の人々は成田山への参拝をするようになったとのこと。現在でも市川家は團十郎の襲名を成田山の不動明王に報告し、演舞を奉納している。
■成田山新勝寺を参拝する
成田山への参拝は、周辺道路の渋滞が予想されるので、アクセスは公共交通機関の利用を推奨したい。JR成田線成田駅か、京成本線京成成田駅が最寄り駅。東京都心部からは1時間少々で到着する。改札を出て数分ほど歩けば、表参道の入り口に到達する。
道中にはお土産屋の他に、鰻料理屋が軒を連ねる。近くの印旛沼で獲れる淡水魚を食べる食文化が根付いていた成田では、江戸時代から新勝寺への参拝客に鰻を振る舞っていた。その当時の名残が残っている。
参道を下り終わると、荘厳な雰囲気の総門が参拝客を出迎える。その先にある仁王門を通って階段を上がれば、正面に大本堂を望む。新勝寺伝統の御護摩(おごま)祈祷が執り行われるのもこの中だ。
大本堂の裏手に回る階段を上がる。釈迦堂や額堂(がくどう)といった重要文化財の並びを奥まで進むと、比較的新しい建物である醫王殿(いおうでん)と平和大塔に行き着く。この辺りが境内の北端部にあたる。
平和大塔から大本堂方面に戻る際は、元の道を辿るほかに、隣接している成田山公園を通るルートもある。広大な自然を感じられる公園内は起伏に富んでいて、ハイキングコースとしてもちょうど良い。
公園内を巡りつつ、平和大塔から南下するように進めば、大本堂と聖徳太子堂の間に出る。そのまま三重塔を右手に望みながら進めば帰路となる。