■名水の町が生み出す和菓子と水出しコーヒー

 環境庁の第一回日本名水百選に指定された「宗祇水(そうぎすい)」をはじめ、名水の町として名高い郡上八幡。夏ともなると、その名水を利用した「水まんじゅう」が和菓子屋さんの軒先で売られる。なかでも「やなか屋本舗」では、お猪口に入れた水まんじゅうがそのまま湧き水で冷やされており、その見た目とつるんとした喉越しと爽やかなこし餡の味わいが人気を博している。

 また、近年の町おこしプロジェクトで生み出された「水出しコーヒー」もおもしろい取り組みだ。まず、郡上八幡旧庁舎記念館内のお土産売り場などで販売されている「水出しコーヒー体験セット(ボトル、フィルターに入ったコーヒー豆、水汲みマップ)」を購入する。マップに書かれた水汲み場を巡り、自分だけの水出しコーヒーを作る。町を歩いている間にコーヒーが抽出され、約2時間で美味しいコーヒーが出来上がる。郡上八幡の水の文化を、美味しく、そして楽しく感じることができるのでおすすめだ。

歩くほどに抽出されていく。お土産にも最適

■今でも息づく「川ガキ文化」

 「川ガキ」とは、夏になるとどこからともなく自転車で川に現れ、上級生下級生が入り乱れてさまざまな川の遊びに興じる子どもたちのことを指す。しかし、近年ではその姿を川で見る機会は減り、今ではすっかり「絶滅危惧種」となってしまった。しかし郡上八幡では、今でもその川ガキ文化が脈々と受け継がれているのである。

 代表的な光景は、やはり新橋からの吉田川への飛び込み風景だろう。いつの頃からか度胸試しとして行われており、夏になると多くの地元の川ガキたちが橋から飛び込む光景を見ることができる。橋の高さはじつに12mもあり、とてもじゃないが慣れてない人は飛び込めない。新橋からの飛び込みは地元の子どもたちにとっては大変栄誉なことであり、危険のないように、初めて飛び込む子には必ず上級生が付き添う。

 元川ガキだった大人たちは、ニコニコしながら静かに見守るだけというというのも素敵な文化だ。彼らはさまざまな段階を経て安全に飛び込む術を身につけているため、観光客がノリで飛び込むと事故につながる。彼らの文化を守るため、見るだけにしておこう。

高さ12mの新橋からダイブ!  郡上八幡の夏の風物詩だ

 このように、「水」をテーマにしてみるだけでも非常に楽しい郡上八幡。他にも郡上八幡城をはじめとして見所も多いし、グルメや体験ものも豊富だ。そしてもちろん、郡上おどりもチャンスがあれば体験してほしい! 亀尾島川や長良川の川旅プランのなかに、ぜひ入れ込んで楽しんでもらいたいと思う。

<周辺の立ち寄りどころ>
・4月中旬~5月上旬には一面ピンクの花絨毯「相生の芝桜」
・8月には夜通し踊る郡上おどりが楽しめる城下町「郡上八幡」
・郡上八幡のシンボルで名水百選第一号「宗祇水」
・司馬遼太郎を魅了した美しい山城「郡上八幡城」
・食品サンプル作り体験「サンプルビレッジいわさき」
・シルクスクリーン印刷体験「タカラギャラリーワークルーム」
・焼きそばとお好み焼きの専門店「かたぎり」
・お土産買うなら「郡上八幡旧庁舎記念館」
・東海地区最大級の石灰洞窟「大滝鍾乳洞」
・温泉は駅のホームが隣接する「日本まん真ん中温泉 子宝の湯」

<前編>いま行かないと後悔する!  失われゆく最後の清流「カヌーイストたちの隠れ聖地」