南アルプス奥秩父の山並みに囲まれた甲府盆地。そのほぼ真ん中に位置する「石和温泉(笛吹市)」の中心を流れる平等川。その川沿いにある「さくら温泉通り」の桜並木が見事に咲き誇っている。直前まで上空に冷たい空気が流れ込んでいたため開花状況は低調だったが、ここ数日の暖かさで一気に開花が進み、2022年3月28日に甲府気象台が満開宣言を出している。

 石和温泉は1961年(昭和36年)1月、石和のぶどう園から高温の湯が湧き、付近の川に流れ出して誕生した“青空温泉”が有名となり発展してきた。山梨県でも最大規模の温泉地で、泉質はアルカリ性単純泉で、神経痛や打ち身、慢性消化器病、冷え性に効能があるという。

 「さくら温泉通り」は全長約900mで、約160本のソメイヨシノが川の両側を挟むように薄紅色のトンネルとなっている。川沿いは両岸ともウッドデッキの歩道となっており、桜を見物しながら散歩をするのにもってこい! 歩行者用の橋の数も多く、右へ左へ好きなように川を渡り、橋の上から満開の桜と川の流れを楽しむこともできる。爽やかで気持ちのいい気候と相まって、どこか華やいだ気持ちにしてくれるのも桜の魅力なのかも。数多くの温泉旅館が立ち並び、温泉とお花見の組み合わせは最高の贅沢だ。

 暗くなると雰囲気は一変、ライトアップされた夜桜は幻想的な雰囲気だ。川面に写り込む桜と温泉街の組み合わせはどこか情緒的。夜風に吹かれて舞い散る桜吹雪は、しっとりとした春の夜の風情をより一層盛り上げてくれているようだ。せせらぎの音を聞きながら桜を愛でるひとときは日常を忘れる、この季節限定の楽しみだ。