■神様の足跡といわれる「御神渡り」

自然への畏れを感じさせる「御神渡」(写真提供:諏訪観光連盟)

 御神渡りは毎回同じような場所にできるという。最初にできた南北方面の氷脈を「一の御渡り」、その後、同方向にできた氷脈を「二の御渡り」と呼ぶ。また、東岸から「一の御渡り」「二の御渡り」に直交するようにできた氷脈は「佐久の御渡り」と呼ばれる。

 諏訪湖の南側に諏訪大社上社が、北側に諏訪大社下社の境内地があり、御神渡は上社の男神であるタケミナカタノカミ(建御名方神 )が、下社の女神であるヤサカトメノカミ(八坂刀売神)のもとへ会いに行く際に、諏訪湖を渡った足跡であると言われている。

 御神渡りができない年は「明けの海」と呼ばれ、地元の友人は「明けの海」の知らせを聞くと”今年は浮気してるねえ”などと言う。

■500年以上続く「御神渡り」出現後の神事「御渡り神事」

前回(2018年)観測された「御神渡り」(写真提供:諏訪地域振興局商工観光課)

 御神渡りができると、諏訪大社上社の摂社である「八剣神社(やつるぎじんじゃ)」の宮司等が御神渡りを拝観し、その年の農作物、社会情勢、気候等を占う「御渡り神事」が諏訪湖で行われる。その結果は「神渡注進状(みわたりちゅうしんじょう)」として諏訪大社上社に報告され、宮内庁と気象庁にも報告することとなっている。

 古くは朝廷や幕府に提出されていた御神渡りの記録は、出現しない年も含めて室町時代から現在まで500年以上もの間続けられており、気候変動の記録としても貴重な資料となっている。

 

 諏訪湖に厚い氷が張り、御神渡りができていても氷上に立ち入るのは非常に危険だ。氷の張った湖に落ちると、救助が困難で命の危険がある。御神渡りを観察するために氷上に立ち入ってはならない。くれぐれも注意しよう。

 今季は寒さが厳しいという情報もある。4年ぶりの「御神渡り」の出現に期待が高まる。