この数年、川のアクティビティ人口は急激に増加している。その要因の1つとして、パックラフトやSUPなどの気軽な川下りアイテムが増えたことが挙げられる。特にパックラフト(空気注入式ボート)は、軽量・コンパクトで安定性があることで愛好者が増えており、もともと川に縁がなかったキャンパーやハイカーからの流入も多い。

 しかし、手軽になった分、十分な知識と経験がないまま川を下って事故に遭う人も最近増えている。しかも、そのほとんどが単独行者だ。これ以上悲しい事故は起きてほしくはないし、パックラフトユーザーや単独行者が十把一絡げで非難されてしまうのも心苦しい。

 そこで今回は、僕の経験と事例をもとに川旅に挑むための“リスクと段階”のお話をさせていただこうと思う。

■段階を踏むことの大切さ

 例えば、登山を始めたばかりの人が、いきなり単独で3,000mの雪山に挑戦したらどうなるだろうか? パックラフトを買ってすぐに単独で川を下るということは、ほぼそれと同様の危険を意味している。選ぶ川によっては、簡単に命を落とすこともあり得るのだ。実際に近年はそのような事故の報告が増えており、川に携わる人たちの間で、無謀な川下りをする人への危惧の声が高まっている。

パックラフト。激流用から静水用までさまざまな種類が出てきている

 とまあ、いきなり脅しから入ってしまったけど、それほどまでに川にはさまざまな危険要素が潜んでいるのだ。

 登山にもいえることだが、難易度の高い場所や単独行で行きたい場合は、まずは“段階”を踏むことが不可欠。自然の楽しさを知ることはもちろん、仲間と一緒に簡単なところから経験を積んだり、ガイドツアーやスクールに参加して知識・技術・危機管理能力を得てからじゃないと、もう一歩先の素晴らしい世界を楽しむことはできない。

 今回は、参考として僕の場合はどんな段階を経てきたかを書いておく。もちろん僕と全く同じ段階を辿る必要はないが、要点の部分はぜひ参考にしてもらいたい。