本州の山々に本格的な紅葉の南下を告げる、東北は奥羽山脈の秋。秋の彩に敏感なハイカーたちはみな、みちのくの山々のチェックを欠かさない。本州でもっとも早い色付きをみせる岩手の三ツ石山を筆頭に、八幡平、秋田駒ヶ岳、焼石岳などなど、この山域には挙げればきりのない名山の数々がひしめいている。

 そんな中でも宮城県の「栗駒山」は、ひと味ちがった紅葉を楽しむことができる山だ。どう違うのかというと、それはこの山の美しすぎる紅葉を称えた「神の絨毯」という称号から想像することができるだろう。加えて、歴史探訪や文化体験を組み合わせれば、味わい深き山旅が約束される。

■登山だけで帰るのはもったいない!   掛け合わせのテーマで満足度アップ

岩手県側の栗駒山の登山口、須川温泉。大日岩周辺には源泉から立ち上る湯けむりが

 宮城県はぼくの故郷ではあるものの、登山をするようになってから初めて知ることがとても多い。たとえば栗駒山がそれほど美しい山だとは知らなかったし、近くにたくさんの良質な温泉があるということも、あまり意識していなかった。暮らしの身近なところにあるものはすべて“日常”になってしまうから、地元の人にとってはいつもの風景だし、あって当たり前のこと。これ「地元あるある」だと思う……。

栗駒山の南麓一帯は紅葉の名所がひしめく。鳴子峡はその中でも群を抜く美しさと人気を誇る

 ところが、故郷を離れて“外”から眺める宮城県とその盟主・栗駒山は、自然と歴史文化の宝庫であり、これをスルーしてしまうのはもったいないと思うのだ。

 仙台開府の前に大崎を拠点にしていた伊達家や、松尾芭蕉の足跡をたどる奥の細道、国府・多賀城と霊島・金華山を中心にした陸奥国の天平ロマンなんてのもいい。鳴子や鬼首の源泉掛け流しの温泉は身心が湯に溶けてしまうほどに気持ちがよく、さすがは米どころと唸る大崎の日本酒に塩釜や三陸あたりで揚がる新鮮な海の幸は抜群に合う。そして忘れてはならないのは、栗駒山のふもとに位置する花山の自然薯と蕎麦だろう。

 こんなふうに、宮城の風土グルメと栗駒山ハイクを掛け合わせて楽しむ山旅は、きっとあなたの“最高”を更新するはずだ。